赤羽根 秀宜氏中外合同法律事務所 パートナー/薬事・ヘルスケア・医療グループ代表


薬局の管理薬剤師は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように薬局開設者に対し、必要な意見を述べなければならず(薬機法8条2項)、薬局開設者は、この意見を尊重しなければなりません(薬機法9条2項)。この管理薬剤師の意見具申に関する規定が、令和元年の薬機法改正において改正されています。この改正は、薬局ガバナンスの強化の一つであり、令和3年8月1日に施行されます。

管理薬剤師は、この改正の施行後も、薬局開設者に意見を述べなければならないことには変わりませんが、意見は書面で述べなければならないこととなります。そして、この書面の写しを3年間保存する必要があります(改正薬機法施行規則11条2項第2号)。一方、薬局開設者の義務も意見を尊重するだけでは足らず、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは措置を講じなければならず、その講じた措置の内容を記録して保存しなければなりません。また、薬局開設者が措置を講じない場合にも、その旨と理由の記録、保存が求められます。

改正後は管理薬剤師、薬局開設者双方に記録を残すことが義務付けられますので、これまで以上に問題があった場合の責任の所在が明確になると考えられます。管理薬剤師においては、問題があったにも関わらず意見を述べたことの記録が残っていなければ指摘をしなかったとの判断がされるでしょう。意見を述べていても記録が残っていなければ義務を果たしたことになりません。薬局開設者としても、意見が出された場合にはその事実が記録に残りますので、知らなかったということはできません。また、適切な対応をとったか否かの記録も残りますので、理由なく対応をしないこともできません。

この意見具申の改正は、ガバナンスの強化に関する改正のうちでも重要なものといえるでしょう。薬局開設者においては、この意見具申が適切に運用されるような体制の構築も必要になりますので、管理者が意見を述べやすいような手続きや運用を構築するなどの対応も検討しなければなりません。過去の薬局に対する行政処分において、管理者が「開設者への適切な意見具申を行わなかった」「管理者が・・・開設者に具申するも聞き入れなかった。」等が処分理由になった事例もありますので、意見具申の手続きについて薬局で検討しておく必要があるでしょう。

なお、改正薬機法では、薬局開設者が管理薬剤師を選任する場合には、「必要な能力及び経験を有する者でなければならない。」と改正もされます。この条件について具体的な要件は示されていないものの薬局開設者には選任の責任がありますので、必要な能力経験があるかを検討した上で選任することも重要となります。