【POINT.1】患者状況に応じて主治医が中心に、多職種で見守るローテーションを構築

山﨑 徹 氏薬局ニコニコ(東京都江戸川区)

患者ごとに他職種と協働・情報共有し、“生活のなかの薬物療法”を支援

私は前職では最後の約10年間は本部に務めていました。現場から離れ、管理職業務をするなかで、必要とされる薬剤師、薬剤師像とは何かと自問自答していました。また、オフィスでは教える側の仕事ばかりで、せっかく学んだことが、患者さんからどういう反応が得られるのか、ダイレクトに取り組んでみたいと思っていました。そのなかで“個別在宅”を充実する必要性を感じ、個人の患者宅での薬剤師業務を推進している「薬局ニコニコ」に辿り着きました。面で外来処方箋も多少は受けていますが、9割は在宅患者さんです。「在宅はニコニコで」と依頼されるクリニックが3施設あり、主に連携する医師は10人ほどいて、直接のご依頼のほか、地域のケアマネージャーさんからも紹介があります。

薬局ニコニコは、絶対に依頼を断らない。これが前提ですので、臨時処方、夜間、祝休日、全て対応しています。夜間も真夜中はほとんどありませんが、夜8時、9時でも、医師や看護師さんは往診に行きますので、そこは当然対応します。

薬剤師は12人で常勤は7人です。担当エリアは江戸川区及び葛飾・江東区地域で、担当患者数は個人宅だけで約430人に達します。私は70人ほど担当し、なかには若い精神科疾患の方もいますが、ほとんどが高齢、独居の方です。このうち約3割は糖尿病を合併されています。

何らかの予兆をキャッチし情報共有、皆のローテーションでフォロー

実際の在宅業務では、患者さんと話しをしている間は普通ですが、後から確認すると全く覚えていない、薬を受け取ったこと自体覚えていない、薬を飲んだかどうか覚えていないという事例が少なくありません。糖尿病の場合、薬を飲みすぎて低血糖で倒れてしまうこともあり、事故の予防を心掛けています。

従って、状況がひどい場合、週に1回訪問しますが、それ以外の日に他の医療・介護者の見守りを、どう確保するかが大切になります。そこで薬剤師が月曜日に訪問したら訪問看護師は水曜日、ヘルパーは金曜日というように、何重にもフォローできるよう、ケアマネージャーが主導してローテーションを組み、見守る体制づくりをしています。また、担当の医師からの依頼の場合もあります。

認知の高齢者では特に注意が必要ですが、幸いなことに、いきなりドンと低血糖を起こす事故はこれまで経験していません。実際には、何らかの予兆がありますので、薬剤師が介入した際の情報も、皆で共有し、訪問看護師による問題点の確認を含め、最終的に主治医につなぎ、事故防止に努めています。

一方、私たち薬剤師の大きな役割は、薬の飲み方に関連した指導です。薬局の投薬カウンターでも、「脱水に気をつけましょう」「お水を摂りましょう」と指導はしますが、実際は見えません。在宅患者では、実生活を見ることができます。例えば、普段使っているコップがものすごく小さかったという事例がありました。ある患者さんに、「いつも飲んでいるように、水を飲んでみましょう」と促した結果、普段、お猪口みたいなコップで水を飲んでいることが分かりました。

また、ある患者さん宅では冷蔵庫を開けると、庫内にインスリン製剤が何十本も残っているということもありました。これも現場に行かないと気づかないことです。もう一歩、生活の中に入り込むと見えてくるものがあります。