【POINT.1】「さどひまわりネット」を介して、医療・介護・福祉関係者間で情報連携

光谷 良太 氏さど調剤グループ / 薬局事業部 業務部長

創業者の父の急病を機に島に戻り、在宅訪問にも積極的に対応

私は大学卒業後、父が創業した薬局には就職せず、2014年に新潟市内の地域薬局チェーンに就職しました。そのチェーンでは医師や看護師らとの連携を大事にし、在宅訪問指導にも取り組んでいました。その姿をみて、薬局薬剤師に対する考え方が変わったように思います。

薬局長を任されていた2019年、父の急病で島に戻り、さど調剤グループに入社しました。同時に業務部長に就任し現在に至っています。当社は、代々医薬品卸として医療機関などに医薬品を卸してきましたが、父が時代の変化やニーズに対応して薬局を創業し、2023年1月現在は島内に5店舗、新潟県内全体で6店舗を展開しています。

佐渡には病院・有床診療所が4施設、診療所が15施設、薬局は25施設あります。人口はピーク時に約10万人でしたが、今は約5万人です。近年は、佐渡市への移住者は年間500人ほどに増えていますが、総人口としては、毎年500~1000人単位で減少しています。佐渡の高齢化率が約42%、日本の平均が約29%ですから、ある意味では日本の将来を先取りしているといえます。

そういう厳しい環境だけに、様々な形での連携が重要だと思っています。例えば当社では全店で特別養護老人ホームやグループホームなど介護施設調剤、個人宅の在宅訪問を実施しています。市内半分以上の介護施設、介護支援事業所と連携しています。決して薬剤師が多い地域でない中、在宅訪問や他職種との連携に力をいれていますので、若手からベテランまで幅広い年齢層の薬剤師が活躍しています。当社でも20代~70代まで在籍しています。

“限りある資源を有効活用する”ため情報の無駄をなくし、より深い共有を目指す

佐渡では、2013年から病院・診療所・調剤薬局・介護福祉施設等がネットワークでつながり患者さんの情報を共有する「さどひまわりネット」があります。佐渡市は急激な人口減少と医療資源不足、担い手の高齢化という厳しい環境のなかで、そもそも医療・介護関係者間で情報がつながっていなければ、効率的に医療が提供できないということで、医療・介護情報が職種を問わず制限なく閲覧できるシステムを構築しました。

医師会中心のネットワークなどが多くみられますが、さどひまわりネットは、病院・診療所、歯科診療所、薬局、介護・福祉施設の他に大学なども含め84施設が参加する「NPO法人 佐渡地域医療・介護・福祉提供体制協議会」が基盤となり、参加施設の利用料等により運営されています。現在、住民の約3割、高齢者に限ると約6割から同意を得て、個々の医療内容や服用薬の情報などが共有されています。

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さどひわまりネット参加職種と権限

月1度は医療、介護、福祉関係者が会合を開きます。とにかく無駄があると資源の少ない島では、回っていかないので、情報の無駄をなくし、より深い情報を共有することを目指しています。

ネットの利用状況は、実際にデータを取ってみると、薬剤師が一番使っているということが分かりました。そこから推測されるのは、処方箋以外に情報が無いなかで調剤しなければならないというリスクを低減するためだろうと思います。医療過疎地ではありますが、薬局・薬剤師として薬の供給だけでなく、ネットを活用し、できる限り専門的なことをやろうと思っています。