【POINT.1】低血糖・シックデイ・自己注射を焦点にアドバイスと確認が基本に

江田 一樹 氏しんわ薬局立川店

「万が一の対応」は患者さんだけでなく、繰り返し家族とも共有

当薬局の主な処方元である立川相互ふれあいクリニックの処方箋には、右端に腎機能、肝機能、カリウム値、カルシウム値やヘモグロビン値等の検査値が記載されています。毎回の更新ではありませんが、糖尿病のある方は頻繁に更新されています。同クリニック糖尿病代謝内科を受診している患者さんは、必ず糖尿病連携手帳をお持ちですので、受診ごとの血圧、体重、随時血糖やHbA1c、中性脂肪等の検査値などを必ず見せてもらい確認、薬歴に転記しています。

その上で処方医の治療方針、糖尿病治療ガイドラインに沿い、専門用語は避け分かりやすい言葉でアドバイスするように心がけています。支援内容は個々の薬剤師に任せますが、ベースとなる部分は統一しています。

特に3つの点に注意しています。

1つ目は低血糖症状です。高齢者の方は低血糖症状を自覚しにくい方が多いと思います。普段はない頭痛、手足が痺れるという症状を感じたときは、ブドウ糖を摂取するよう、患者さんの希望に応じて配布しています。命に関わりますのでご本人だけでなくご家族も把握し、万が一の際に対応できるよう、普段からアドバイスしています。

ある患者さんから教わったことですが、体調を崩すと夜中に低血糖を繰り返すので、目が覚めた時に水ようかんを食べる方がいました。水分も同時に摂取できるので、他の患者さんにも対応法としてお伝えしています。また、朝起きた時に低血糖が疑われる場合には、寝る前に小さなおにぎり、はちみつドリンクなどの補食もお勧めしています。

2つ目はシックデイ時の対応です。主治医とシックデイ時のルールを事前に決めておくことが重要ですので、主治医から説明を受けているか否かは確認しています。基本的には血糖を測定し、状態を把握し、脱水を防ぐための水分補給が大切です。電解質補給に味噌汁やスープ等も適しているので、シックデイ時の食事としてお勧めしています。もちろん高熱、高血糖が続く際は早期受診をお勧めしています。しかし、実際になってみないと分かりませんので、繰り返し注意喚起しています。

3つ目はインスリン自己注射の状況確認です。よくあるのは、注射針を毎回交換しない事例です。針を装着したままの保管では異物、細菌の混入により品質低下することを丁寧に説明し、理解を得るようにしています。この点も繰り返し説明することが大事です。

ある高齢の男性患者さんで、血糖管理がうまくいかない方がいました。注射針を刺す位置を確認すると、毎回同じ部位に打っていたことが分かりました。そこで広い範囲に打つ必要性を説明し、実践してもらったところ、血糖管理が改善したという事例が過去に2件ありました。

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糖尿病がある方にアドバイスする際の注意点

この3つのポイント以外にも、患者さんとの会話や病院からの連絡、季節的な注意事項もありますので、それらを踏まえて個々の患者さんに応じて治療支援を行うよう心掛けています。

「加算」対象外も必要に応じフォローしTRでフィードバック

当店の場合、主に糖尿病代謝内科にかかっている方を中心に、より丁寧な対応が必要ですので、医師との連携は重要です。ただ、同科では非常勤を含め5人ほどの医師が毎日入れ替わりで診察していることもあり、直接、特定の先生とやり取りするのは難しい状況です。

ただ、調剤後薬剤管理指導加算の要件として、インスリンが新規に処方された、インスリンの単位が増減した、SU剤が新規に処方された、SU剤の用量が増減した――という処方に対しては、基本的に全ての患者さんを対象に、投薬後約1週間経った時点で、電話によるフォローアップを行っています。そこで得た情報を踏まえ、緊急性が低い事項に関してはトレーシングレポート(以下、TR)を書きフィードバックしています。

フォローアップ内容は主に服薬状況と副作用発現の有無、また、患者さんが自己血糖測定をしているので随時血糖値の状況、服薬上で困っていることなどを聞き取り、医事課を介して報告しています。

また、店舗スタッフが皆、加算対象のインスリンとSU剤以外でも、積極的にフォローアップしようという姿勢ですので、月に10件ほどのフォローアップ件数になります。もちろん患者さんには、予めフォローアップの大切さを説明して、ご理解を得てから実施しています。例えば、「今回は新たに低血糖を起こしやすい薬が出ています。先生も薬局としても心配ですので、1週間後に電話でお話を聞かせてください」というようにお伝えします。

ほとんどの場合、同意が得られますので、「1週間後の〇月〇日の夜○○時に電話させていただきます。番号は○○で良いですか?」と、細かくアポを取り、そのことをお薬手帳に貼っておきます。もし、患者さんが電話に出られない場合には、薬局側からかけ直すようにしています。