SDMを重視した外来統合失調症患者の再発・再燃時の治療におけるロナセンテープの位置付け

SDMを重視した外来統合失調症患者の再発・再燃の治療におけるロナセンテープの位置付け

【監修】

医療法人仁風会 倉敷仁風ホスピタル
診療部長 渡邉 佑一郎 先生

渡邉 佑一郎先生

※作成時ご所属

統合失調症は再発・再燃、そして再入院を繰り返してしまう疾患として知られています。そこで本コンテンツでは、「SDMを重視した外来統合失調症患者の再発・再燃時の治療におけるロナセンテープの位置付け」をテーマに、医療法人仁風会 倉敷仁風ホスピタル 診療部長 渡邉 佑一郎先生よりご解説いただきました。

倉敷仁風ホスピタルの特徴と地域における役割

渡邉先生

倉敷仁風ホスピタルは、岡山県倉敷市に位置する精神科病院です。岡山県西部で急性期病床を有しているのは当院のみですので、岡山県西部の精神科救急医療の中心的な役割を担っています。また、デイケア、ショートケアでは、個々の患者さんに合わせたプログラムを作成するなど、オーダーメイドな精神科医療を提供しています。

統合失調症患者さんの年齢層は幅広いですが、地域の高齢化に伴い、高齢化してきている印象です。また、急性期病床を有していることもあり、急性期の患者さんを比較的多く診療しています。

渡邉 佑一郎先生

外来統合失調症患者さんの治療目標

渡邉 佑一郎先生
渡邉先生

私が一番大事にしているのは、未来を見据えて治療をするということです。目の前の不調を抱えた患者さんに対して、今の症状をできる限り早く治療することはもちろん、社会に復帰した後に、健康な方と変わらない普通の生活を送り、再入院しないように過ごしてもらえるような治療を行うことも意識しています。

そのために重要なのは、患者さんが続けやすい薬剤を、患者さんのライフスタイルや嗜好などを踏まえて相談しながら一緒に選んでいくSDMを実践することだと考えています。患者さんが続けやすい薬剤の特徴は、「患者さん自身が効果を実感できる」、「副作用が出にくい」、「鎮静作用がない、もしくは少ない」、「1日当たりの投与回数が少ない」などであると考えています。

外来統合失調症患者さんの再発・再燃の前兆(サイン)

渡邉先生

良好な長期予後を達成するためには、再発・再燃の前兆症状をとらえ、適切に治療介入することが重要です。この再発・再燃の前兆(サイン)は患者さんによりさまざまですが、不眠は大きなサインの1つです。また、通院の間隔がずれてきたり、お薬が余ってきたりする場合も、再発・再燃の前兆(サイン)であることがあります。さらに、イライラ感や幻聴などもそのサインであることがあります。これらのサインは、患者さん本人は気がついていないことがありますので、家族などの支援者からお話を聞くようにもしています。

渡邉 佑一郎先生

外来患者さんにおける再発・再燃時の治療方針

渡邉 佑一郎先生
渡邉先生

再発・再燃する原因は、大きく2つにわけられます。

1つは、服薬アドヒアランスが不良な場合です。この場合、患者さんごとに服薬アドヒアランスが不良になってしまった原因を探り、その原因を踏まえたうえで対応策を検討します。たとえば、経口剤の数が多くて服薬アドヒアランスが不良になってしまった患者さんの場合は、必要な薬剤を一から見直して、身体疾患に用いる薬剤を含めて薬剤を整理し、シンプルな処方にします。その際、SDMを実践しながら薬剤を整理しますが、経皮吸収型製剤や持効性注射剤(LAI)への剤形変更も検討します。

もう1つは、服薬アドヒアランスに問題はない場合です。この場合、薬物療法の効果が不十分などの要因と、外的なストレスが要因の2つのパターンが考えられます。薬剤の効果が不十分で再発・再燃を来したと考えられる場合は、抗精神病薬の併用を検討します。また、外的なストレスが要因で再発・再燃を来したと考えられる場合は、ストレスが軽減する方法を患者さんと一緒に考え、対処法をアドバイスします。

再発・再燃する原因と治療方針

① 服薬アドヒアランスが不良な場合 例)
・原因を探り、対応策を検討する
・経口剤の数が多い場合、必要な薬剤を見直し、シンプルな処方にする
・経皮吸収型製剤や持効性注射剤(LAI)への剤形変更を含め、患者さんのライフスタイルに合わせた薬剤に変更する
② 服薬アドヒアランスに問題はない場合 1)薬物療法の効果が不十分などの要因:抗精神病薬の併用を検討する
2)外的なストレスが要因:ストレスが軽減する方法を患者さんと一緒に考える

薬理プロファイルと薬物動態から考える再発・再燃時の薬剤選択

渡邉先生

再発・再燃時は、患者さんの未来を見据え続けやすい特徴を持った薬剤を選択します。薬理プロファイルの観点からは、標的となる症状に効果が期待できる受容体への親和性が高く、副作用に関連する受容体への親和性が低い薬剤ということができると思います。

また、薬物動態の観点からは、血中濃度推移が安定する薬剤が望ましいと考えています。血中濃度推移が安定すると、効果の安定や血中濃度依存的な副作用の軽減も期待できるからです。経皮吸収型製剤や持効性注射剤(LAI)は血中濃度推移が安定する剤形ですので、よい選択肢になると思います。

渡邉 佑一郎先生

患者さんが続けやすい薬剤の特徴

  • 患者さん自身が効果を実感できる
  • 副作用が出にくい
  • 鎮静作用がない、もしくは少ない
  • 1日当たりの投与回数が少ない

再発・再燃時におけるロナセンテープの有用性

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください 。

渡邉 佑一郎先生
渡邉先生

再発・再燃した外来統合失調症患者さんの薬剤選択肢の1つが、ロナセンテープです。

ブロナンセリンはドパミンD2受容体、ドパミンD3受容体およびセロトニン5-HT2A受容体に選択的な親和性を持ち、過剰な鎮静や代謝系副作用を引き起こすとされる各種受容体への親和性が低いことも特徴です<図1>。

また、ロナセンテープの薬物血中濃度推移は日内変動が少なく、安定していることが示されています<図2>。

さらに、国際共同第3相試験(検証的試験)において、有効性の主要評価項目である「6週時でのベースラインからのPANSS合計スコア変化量」は、40mg群では-16.4、80mg群では-21.3であり、いずれの群もプラセボ群に対する優越性が検証されました<図3、図4、図5、図6>。

また、ベースラインからのPANSS合計スコア変化量を各測定時点でみると、80mg群では1週時から、40mg群では2週時から多重性の調整をしない探索的な検定でプラセボ群との有意差が認められました<図3、図4、図5、図6>。

これらの結果や私の経験などから、再発・再燃した外来統合失調症患者さんの再入院を防ぐための薬剤選択肢として、主剤だけでなく併用薬としてもロナセンテープは有用であると考えています。

ブロナンセリンの受容体結合特性:DSA(Dopamin-Serotonin-Antagonist)
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<図1>

血漿中濃度ー反復貼付(健康成人)
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<図2>

PANSS合計スコアの変化量と推移〔主要評価項目/副次評価項目〕
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<図3>

試験概要①
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<図4>

試験概要②
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<図5>

副作用 二重盲検治療期
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<図6>

私がロナセンテープの使用を検討するケース

渡邉先生

まず、急性期症状が見られる患者さんです。再発・再燃で入院して来られた患者さんはもちろんですが、症状が不安定になってしまい入院を検討しなければならない外来患者さんにも有用です。その際、早期から十分な効果を期待したい場合は、承認最大用量の80mgから貼付を開始します。

経口剤による治療に抵抗感がある患者さんの選択肢にもなります。たとえば、興奮などにより経口剤を拒否する患者さんや、「どの経口剤でも副作用が出る」と思い込んでいる患者さん、「経口剤の味が嫌だ」とおっしゃる患者さんなどです。そのような患者さんにロナセンテープを提案すると、すんなりと受け入れてくれることが多いです。

また、消化管障害により、経口剤の吸収に懸念がある患者さんにも、ロナセンテープは有用な選択肢になります。精神疾患患者さんは、便秘などの消化管障害を併存していることがあります。ロナセンテープのような経皮吸収型製剤は、消化管吸収の影響や肝臓での代謝による初回通過効果を受けないため、薬物のバイオアベイラビリティを高めることができます。そのため、消化管障害で経口剤の吸収に懸念がある患者さんには使用を検討します<図7>。

渡邉 佑一郎先生

私がロナセンテープの使用を検討するケース

  • 急性期症状が見られる患者さん

    → 早期から十分な効果を期待する場合、承認最大用量の80㎎から開始

  • 経口剤による治療に抵抗感がある患者さん
  • 消化管障害で経口剤の吸収に懸念がある患者さん
経口剤と経皮吸収型製剤の体内動態の違い(イメージ)
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<図7>

ロナセンテープを患者さんに説明する際のポイント

渡邉 佑一郎先生
渡邉先生

ロナセンテープを患者さんに説明するときは、「血中濃度推移が安定する」、「食事の影響を受けにくい」、「中止したくなったときははがせばよい」、「服薬アドヒアランスを目視で確認できる」などのメリットを指導せんを用いてお伝えするようにしています。また、皮膚症状が出る可能性があることと、その予防法と対策法を事前に説明しておくことも重要です。そうすることで、皮膚症状が出てしまっても患者さんは焦らず対処でき、治療継続につながると考えています<図8>。

SDMのためのツール
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<図8>

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症患者さんに対する、ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

ロナセンテープ20mg/テープ30mg/テープ40mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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