蛋白尿が軽度の段階でファブリー病を見いだし、早期に治療を開始することが重要

  • 診療科腎臓内科
  • エリア愛知県名古屋市

丸山 彰一(まるやま しょういち)先生

名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座 腎臓内科学 教授

丸山 彰一(まるやま しょういち)先生

糖脂質が全身の組織・臓器に進行性に蓄積し、様々な臓器障害を引き起こす

当科は多くの腎臓内科専門医を育成・輩出してきた歴史を有し、東海地方の腎疾患診療と研究において中心的役割を果たしています。当科で観察される腎生検病理組織は、30施設以上の関連病院から送られてくる検体を含めると年間700例以上に上ります。このうち同意が得られた検体はレジストリに登録され、研究等に役立てられています。

腎臓内科において腎生検を契機として発見される疾患の一つに、ファブリー病があります。ファブリー病は、ライソゾーム内に存在する加水分解酵素α-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の欠損または活性低下により、その基質である糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)が分解されることなく細胞内に異常蓄積することによって発症する疾患です。

Gb3は全身の組織・臓器に進行性に蓄積し、様々な臓器障害を引き起こします。腎臓においてGb3は主に糸球体内皮細胞や上皮細胞、および近位尿細管細胞に蓄積して腎機能の低下をもたらし、最初の徴候として蛋白尿を呈します。腎機能低下が進行すると最終的に末期腎不全に至り、透析療法や腎移植が必要となります。

糸球体上皮細胞の泡沫化(foam cell)はファブリー病を示唆する重要な腎生検所見

ファブリー病に特徴的な腎生検所見として、光顕像における糸球体上皮細胞の腫大、泡沫化(foam cell)が挙げられます。電顕像では、ライソゾームへの脂質の蓄積がmyeloid bodyあるいはzebra bodyと呼ばれる層板状構造物として観察されます。foam cellを認めたときにファブリー病を想起することができるかどうかが、診断の鍵となります。

腎生検等によってファブリー病が疑われた場合、α-Galの酵素活性を測定することによって診断を行います。ファブリー病はX連鎖性の遺伝形式をとり、ヘミ接合体の男性では活性低値が示されればほぼファブリー病と確定診断できます。一方、ヘテロ接合体の女性ではファブリー病であっても活性が正常範囲の値を示すことがあり、酵素活性測定のみで確定診断することは困難です。そのため、家族歴や遺伝子検査の結果等を鑑みて判断する必要があります。血縁者に既にファブリー病と診断されている方、あるいは腎症状や心症状、若年性脳梗塞の症状のある方がいる場合は、ファブリー病の可能性が高まります。

酵素補充療法により腎機能の安定化や改善が期待できる

ファブリー病の治療法としては、酵素製剤を2週間に1回点滴静注することにより欠損・低下しているα-Galの酵素活性を補う酵素補充療法があります。酵素補充療法によって遠位尿細管上皮細胞に蓄積したGb3が除去されること1)や、腎機能の安定化や改善が得られること2, 3)、心臓、脳血管、腎臓イベントのリスクが低減すること4)が報告されています。しかし、既に蛋白尿が長期間持続し、腎機能低下が進行している場合は酵素補充療法が奏効しにくいことを経験しています。蛋白尿が軽度の段階でファブリー病を見いだし、早期に治療を開始することが重要と考えられます。

また、腎不全により透析療法中の患者さんの中にファブリー病の方が潜在している可能性があります5)。潜在するファブリー病を発見するため、当科ではこれまで、一部の透析患者さんの血漿グロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso-Gb3)測定を実施してきました。Gb3の誘導体であるLyso-Gb3は、ファブリー病を示唆する指標として注目されているバイオマーカーです。将来的には、ファブリー病が潜んでいる可能性がある慢性腎臓病(CKD)の患者さんを対象に、α-Gal活性測定やLyso-Gb3測定を実施していくことも検討しています。

ファブリー病を疑う目を備えておくことが大切

腎疾患の背後に潜むファブリー病を発見するためには、日常診療の中でファブリー病を疑う目を備えておくことが大切だと思われます。腎臓内科では何より蛋白尿と腎生検所見がファブリー病に気付きうる重要な契機となりますので、ファブリー病が疑われる症例に遭遇した場合は、積極的に酵素活性測定の実施をご検討ください。

  1. Thurberg BL, et al.:KIDNEY INTERNATIONAL 62 1933-1946, 2002
  2. West M, et al.: J Am Soc Nephrol 20(5): 1132-1139, 2009
  3. Whybra C, et al.: Genet Med 11(6): 441-449, 2009
  4. Beck M, et al.: Mol Genet Metab Rep 3: 21-27, 2015
  5. Tanaka M, et al.: Clin Nephrol 64(4): 281-287, 2005
医療機関名称 名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座 腎臓内科学
住所 〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
電話番号 052-741-2111
医師名 教授 丸山 彰一(まるやま しょういち)先生
ホームページ https://www.med.nagoya-u.ac.jp/kidney/外部サイトを開く