早期の症状からファブリー病を疑う事が良好な治療効果に繋がります

  • 診療科腎臓内科
  • エリア愛知県豊明市

湯澤 由紀夫(ゆざわ ゆきお)先生

藤田医科大学 学長

湯澤 由紀夫(ゆざわ ゆきお)先生

ファブリー病を遺伝カウンセリング室と連携し診断・治療しています

藤田医科大学では、遺伝医療に対するニーズの高まりを受けて、平成 16 年 12 月より遺伝カウンセリング室を設け、遺伝子診療および遺伝カウンセリングを行ない地域の遺伝医療に貢献してきました。ゲノム解析技術の急速な進歩に伴い、単一遺伝子疾患のみならず多因子疾患であるがんや生活習慣病も含めて遺伝カウンセリングの必要性が拡大しています。ファブリー病を含めたこれらの疾患の診断・治療には各科と遺伝カウンセリング室との連携が益々必要だと考えています。

ファブリー病の治療は早期に開始することが重要です

ファブリー病は、X染色体連鎖の遺伝形式をとる遺伝性の先天性代謝異常症で、全身にグロボトリアオシルセラミド(Gb3)という糖脂質が蓄積します。幼少期には四肢の疼痛、角膜混濁、低汗症、被角血管腫といった症状を呈し、一般的に男性は女性に比べて重症になります。腎領域では青年期以降に蛋白尿を呈し腎機能障害が悪化していくケースが多く、透析に至る症例もいます。腎病理に特徴があり、光顕像では蓄積した Gb3 が空胞化として認められ、電顕像では「ミエリン体、ゼブラ体」といわれる構造物として確認でき、ファブリー病の診断に有用な手掛かりとなります。心疾患は、ファブリー病の主な死因であり、酵素補充療法未治療男性ファブリー病の推定生存年齢(中央値)は 60 歳と報告されています1)
ファブリー病の治療には欠損あるいは活性低下した酵素を補充する酵素補充療法が用いられ、症状の改善や進行抑制が報告されています2)。酵素補充療法が開始され 10 年以上が経過し、比較的各症状が軽い「早期」の段階に実施した場合には心臓や腎臓の機能を維持することが確認されていますが、「重症」な方では中々機能維持が難しいことがわかってきました。腎領域では酵素補充療法を実施する際、蛋白尿 1g/day 未満、eGFRが 60ml/min/1.73 ㎡以上の患者さんでは機能が維持されることがわかってきました1)3)。ただ腎機能が重症化している患者さんでも他の臓器障害への有用性を期待し投薬を実施しています。

ファブリー病の症状を日常診療で意識することが重要です

早期に治療を開始するには早期に患者さんを診断することが重要ですが、腎機能低下だけでファブリー病を診断することはなかなか難しいと思います。「痛み、低汗症、被角血管腫、角膜混濁」などの多岐にわたる症状や家族にファブリー病を疑う人がいないかを頭に浮かべながら日常診療に携わることが大切です。そして実際にファブリー病患者さんを診断した場合には家族の方の診断も考慮して下さい。その際には遺伝カウンセリングの部門と連携することをお薦めします。
当院では各科で横断的に診断・治療を実施しています。疑いの患者さんがおられた際には遠慮なくご相談ください。

  1. Schiffmann et al: Nephrol Dial Transplant 24:2102-2111,2009
  2. Germain DP et al: JOURNAL OF MEDICAL GENETICS 18 :1547-1557,2015
  3. West M et al:J Am Soc Nephrol 20:1132-1139,2009
医療機関名称 藤田医科大学病院 腎臓内科
住所 〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98
電話番号 0562-93-2111
医師名 腎臓内科 教授 坪井 直毅(つぼい なおたけ)先生
ホームページ http://www.fujita-hu.ac.jp/HOSPITAL1/外部サイトを開く