高齢患者におけるベンゾジアゼピン系薬剤

ACTA PSYCHIATR SCAND, 148, 391-393, 2023 Benzodiazepines in Elderly Patients. Fava, G. A.

近年の研究ではベンゾジアゼピン系薬剤の役割と機能が見直されてきている。今回,Rozingらは,転倒及び骨折リスクの上昇がベンゾジアゼピン系薬剤,Z薬(ベンゾジアゼピン受容体に作用するが,ベンゾジアゼピン構造を持たない薬剤,すなわちゾルピデムやゾピクロン),メラトニン以外の要因,特に未治療の不眠症に起因する可能性を示唆した。

著者の臨床経験から個別の用法を解説するならば,服薬している薬剤の累積効果や加齢による排泄半減期の延長には注意が必要である。更に,脂溶性が高く即効性と高い依存性を伴うトリアゾラムやアルプラゾラムは連続使用や大量使用との関連が示唆されたが,クロナゼパムのように受容体親和性も脂溶性も低い薬剤ではそれらとの関連が認められなかったとする報告があり,この知見は処方対象の薬物依存リスクに基づいてベンゾジアゼピンの種類を選択することの重要性を支持する。また,就寝時の高用量は夜間の転倒リスクを高める可能性がある。日中の不安により緊張して不眠となる患者も存在することから,日中に低用量を分割投与することでうまく対処できた経験も数多い。そして,薬物療法は短期間が望ましい。生活習慣の改善は服薬の回避や漸減中止にも役立つかもしれない。幸いなことにベンゾジアゼピン系薬剤は長期服薬により効果が減弱することはないようであるため,増量の必要はなさそうである。ただし服薬中止時には離脱反応に注意が必要である。

他の薬剤よりも,転倒や骨折のリスクを高めるものではないことを示唆するエビデンスを追加した。

265号(No.1)2024年4月11日公開

(下村 雄太郎)

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