老年期におけるうつ病/抑うつ症状と高齢期における脳卒中発症の関連:コホート研究の系統的レビューとメタ解析

ACTA PSYCHIATR SCAND, 148, 405-415, 2023 Association Between Late-Life Depression or Depressive Symptoms and Stroke Morbidity in Elders: A Systematic Review and Meta-Analysis of Cohort Studies. Cai, W., Ma, W., Mueller, C., et al.

はじめに

うつ病/抑うつ症状は脳卒中リスクと関連していることが報告されているが,高齢者における関連については結論が出ていない。本研究の目的は,60歳以上の患者におけるうつ病/抑うつ症状と,将来的な脳卒中のリスクとの関連を調査した前方視的コホート研究の系統的レビューとメタ解析を行うことである。

方法

Depression”,“depressive symptoms”,“elders”,“stroke”と関連する医学検索用語をキーワードとし,データベースとしてMEDLINE,EMBASE,PsychINFO,Web of Scienceを利用し,2名の研究者が独立して文献検索を行った。①60歳以上の患者を対象とし,うつ病/抑うつ症状と脳卒中発症の関連を調査した前方視的コホート研究,②全てのタイプのうつ病/抑うつ症状と脳卒中との関連を調査した研究,③Cox比例ハザードモデルで転帰を報告している研究を組み入れた。主要転帰は全てのタイプの脳卒中とした。

バイアスリスクはNewcastle-Ottawa Quality Assessment Scale(質評価尺度)を用いて評価した。

ハザード比及び95%信頼区間(CI)の算出にはランダム効果モデルを使用した。異質性の評価にはI2を用い,出版バイアスの評価にはファンネル・プロットとEggerテストを用いた。

結果

17報の研究,57,761名の患者が本メタ解析に組み入れられた。組み入れられた研究のうち,1報の研究を除いてバイアスリスクは低いと判断された。

うつ病/抑うつ症状を持つ患者では,うつ病/抑うつ症状を持たない患者と比較して,全脳卒中のハザード比が1.39(95%CI:1.22-1.58,p<0.001,I2=55%)で有意に高く,致死的脳卒中発症のハザード比は1.96(95%CI:1.30-2.97,p=0.001,I2=40%),虚血性脳卒中発症のハザード比は1.29(95%CI:1.14-1.45,p<0.001,I2=0%)であり,同様にうつ病/抑うつ症状を持った患者で有意に高かった。

ファンネル・プロットとEggerテストの結果,出版バイアスの存在が示唆された。

結論

本メタ解析において,老年期のうつ病/抑うつ症状の存在には,将来的な脳卒中発症のリスク上昇と有意な関連が見られた。脳卒中のリスクを低下させるためには,定期的な抑うつ症状の評価と,抑うつ症状に対する効果的な管理が重要である。

265号(No.1)2024年4月11日公開

(石田 琢人)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。