リエゾン介入中の入院患者における,ベンゾジアゼピン受容体作動薬の中止と術後せん妄との関係:後方視的コホート研究

COMPR PSYCHIATRY, 104, 152216, 2021 Association Between Discontinuation of Benzodiazepine Receptor Agonists and Post-Operative Delirium Among Inpatients With Liaison Intervention: A Retrospective Cohort Study. Omichi, C., Ayani, N., Oya, N., et al.

背景

せん妄は入院患者において10~30%に生じ,最もありふれた精神障害と言えるが,中でも術後せん妄の有病率が高い。その危険因子としては,高齢,認知機能障害,せん妄の既往歴の他,ベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZDRA)の周術期使用も挙げられる。

BZDRAの長期使用による耐性や依存などの問題を避けるために,その中止が勧告される一方で,急な中止はしばしばせん妄を含む中断症候群をもたらす(65歳以上におけるせん妄の20%が中断症候群に関係していたとする報告もある)。

これまでに,周術期におけるBZDRAの継続・中止・開始による術後せん妄リスクを比較したコホート研究はなかったことから,本研究は,経口BZDRAの継続・中止・開始が,ICU以外の入院患者における術後せん妄に与える影響について決定することを目的とする。

方法

京都府立医科大学附属病院に2016年1月から2018年12月までの間に入院し,術前にリエゾン精神科医による介入が行われた周術期患者を研究に組み入れた。外科医がコンサルテーション‐リエゾンサービス(CLS)に依頼する基準はないものの,高齢,認知機能障害,せん妄の既往歴,大きな手術侵襲といったせん妄リスクが存在する場合にCLS依頼がかかることが多かった。局所麻酔,周術期死亡,研究期間を超えたICU滞在,臓器移植適格性の評価例は除外した。

周術期にBZDRAを投与された患者について,BZDRA投与の経過に応じて,①継続(入院から期間終了時まで投与継続。術後2日以内の服薬再開をも含めた),②中止(入院時は投与されていたが術後に中止。術後3日以降の服薬再開をも含めた。患者は通常術前数日以内に入院となるため,中止は往々にして突然であった),③新規開始(入院時にはBZDRAが投与されていなかったが術後に投与開始された),④非使用(入院時から研究期間終了時まで一切投与されなかった),の4群に分類した。

入院期間,手術時間,精神科的合併症の有無,BZDRAの種類(短時間/長時間の2群に分類)等の情報も収集した。主要転帰はICU以外における術後せん妄の有病率とし,患者のカルテを術後14日目まで追跡した中で,術後7日目までに生じたせん妄を術後せん妄と定義したが,ICU退室後7日目まで(かつ術後14日目まで)に発症した場合も組み入れた。

せん妄の有病率は,各群において,せん妄患者数を全患者数で除して算出した。せん妄の発生に関連する交絡因子(70歳以上,認知機能障害,せん妄の既往歴,入院時の抗精神病薬使用)が与える影響については,層別解析を用いて検討した。

結果

対象者は250名であり,内訳は継続群29名,中止群49名,新規開始群8名,非使用群164名であった。せん妄は78名(31.2%)に発生し,継続群で13.8%,中止群で49.0%,新規開始群で11.8%,非使用群で28.7%と,群間で有意差を認めた(p=0.008)。層別解析においても,中止群が最も高い有病率を呈する傾向が見られた(表)。BZDRAの種類別で見ると,短時間群においてせん妄有病率が高い傾向となった(継続群では有意)。

考察

BZDRAの中止と高いせん妄発症率との関係には,中断症候群や反跳性不眠の影響が考えられる。周術期におけるBZDRAの扱いには慎重さが求められるのみならず,外来での時間をかけたBZDRAの減量が重要であることを再認識させる結果となった。

2021年04月 [no.2(248号)]

表.術後せん妄に与える各種危険因子の層別解析結果

(滝上 紘之)

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