自殺リスクの高い上位10の職業における自殺クラスター:2001~2016年の豪州における研究

J NERV MENT DIS, 208, 942-946, 2020 Suicide Clusters Among Top 10 High-Risk Occupations: A Study From 2001 to 2016 in Australia. Too, L. S., Spittal, M. J.

背景

職業と自殺については,長い間研究によって関連が示されてきた。たとえば,建設作業員,炭鉱作業員,肉体労働者,機械作業員,製造作業員,農業従事者などの職業では,自殺リスクが高いとされている。本稿では,自殺リスクの高い職業群における新たな危険因子,すなわち自殺クラスターの解析を通して示された自殺の伝染について理解を深めることを目的とした。職場は,多くの人にとって重要な社会的接触の場である。同僚の自殺死は,個人から社会的支援の機会を奪うだけではなく,どうやって亡くなったかという情報(自殺方法など)を共有することになり,模倣のリスクを高めることにも繋がる可能性がある。

方法

豪州では,自殺は国立検死官情報システム(Naional Coroner Information System:NCIS)によって同定できる。NCISでは国内全ての報告可能であった死亡が把握されており,検死記録から収集した死亡時の雇用状況や職業などを含めた基本的な社会人口統計学的情報も提供されている。本研究では,2001~2016年のNCISのデータから,自殺による死亡時に雇用されており,職業に関する情報が入手可能であった14,317件の自殺例を解析に組み入れた。

2011年の国勢調査のデータを用いて全職種の自殺率を算出した。次に,この自殺率を元に自殺リスクの高い職業の上位10を選び,これらの職業において空間的自殺クラスター,時間的自殺クラスター,空間的‐時間的自殺クラスターの有無を検討した。

結果

自殺リスクの高かった上位10の職業(10万人当たりの自殺率)は,順に,建設作業員及び炭鉱作業員(52.1),農業(29.6),建設業(24.0),警備・警護(19.6),自動車及び電車の運転手(19.1),動植物の専門職(17.7),芸術及びメディア(17.2),自動車及びエンジニア業(16.1),その他技術職(15.5),機械作業員(15.3)であった。死亡時の職業が判明していた全対象者のうち,41.8%を上記職業が占めていた。

上記職業において,空間的‐時間的クラスターは四つが同定された。うち三つはビクトリア州,一つがタスマニア州で生じており,最大のクラスター(建設業,p=0.049)は2004~2005年の13ヶ月間に生じていた。

空間的クラスターは三つが同定された。自殺クラスターが最も多く見られたのはウェスタンオーストラリア州(建設作業員及び炭鉱作業員,p=0.015),その次に多かったのはタスマニア州であった(動植物の専門職,p<0.07)。

時間的クラスターについては,世界的な経済危機に直面した2007年と2008年初期に二つのクラスターが同定され,それぞれ9件(芸術及びメディア,p<0.053)と122件(建設作業員及び炭鉱作業員,p<0.041)であった。

結論

この自殺クラスター解析では,リスクの高いいくつかの職業群においては,自殺の伝染に対して脆弱である可能性が示された。予防の観点から,脆弱な個人におけるリスクを減らすため,自殺が起こった後の介入(事後対応)が必要である。

2021年04月 [no.2(248号)]

(グナリディス 愛)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。