妊娠中におけるてんかん発作の頻度と抗てんかん薬治療の変化

N ENGL J MED, 383, 2547-2556, 2020 Changes in Seizure Frequency and Antiepileptic Therapy during Pregnancy. Pennell, P. B., French, J. A., May, R. C., et al.

背景

てんかんを有する女性の妊娠中の治療は,母体のてんかん発作を制御しつつ薬物による胎児への影響を考慮する必要がある。妊娠中のてんかん発作の増加頻度は14~62%と報告によってバラつきがあり,米国神経学会は妊娠中のてんかん発作の頻度の変化は,非妊娠女性に関するデータが不足しているため明らかではないとしている。本研究では,てんかんを有する女性において,発作の頻度が産後期よりも妊娠中の方が高い女性の割合が,妊娠していない女性における同期間と比べて高いかどうかを調べた。また,妊娠中と非妊娠中の抗てんかん薬の投与量の変化を比較し,妊娠中の発作頻度の増加の危険因子を評価した。

方法

本研究は現在進行中の前方視的多施設共同コホート観察研究で,女性のてんかん治療に特化して,米国の20施設で行われている。前期[妊娠中(登録から出産まで)及び周産期(産後6週間),合計10.5ヶ月]の発作頻度を,後期(産後6週から7.5ヶ月間)の発作頻度と比較した。対照群は年齢,教育歴,人種,発作型,発作頻度,抗てんかん薬などの特徴が類似したてんかんを有する非妊娠女性とし,18ヶ月間同様に追跡した。

主要評価項目は,意識障害を伴う発作の頻度が前期の方が後期よりも高かった女性の割合とした。また,前期に2群で投与された抗てんかん薬の用量変化も比較した。

結果

前期における発作頻度が後期より高かったのは,妊娠女性で70名(23%),対照群で23名(25%)であった[オッズ比(OR)=0.93,95%信頼区間(CI):0.54-1.60]。

抗てんかん薬の用量が1回以上変更されていたのは,妊娠女性では222名(74%),対照群では29名(31%)であった(OR=6.36,95%CI:3.82-10.59)。

考察

てんかんを有する女性のうち,妊娠中の発作の発生率が産後期より高かった女性の割合は,妊娠していなかった対照群の女性における対応する期間と同程度であった。抗てんかん薬の用量変更の頻度は,妊娠女性の方が同期間における非妊娠女性よりも高かった。

過去の研究では,特定の妊娠期または周産期に発作が増加する可能性があることが示唆されていたが,本研究では両群で差は認められず,前期から後期にかけて発作の頻度は妊婦で14%,対照群で11%減少していた。

過去20年間に,妊婦における抗てんかん薬の処方パターンは,先天性奇形の発生率の低下や神経発達障害の頻度の低下と同時に変化してきた。ラモトリギンやoxcarbazepine*などの抗てんかん薬は奇形のリスクが比較的低いと報告されているが,妊娠中の発作制御のための抗てんかん薬使用によるベネフィットが抗てんかん薬による先天性奇形や神経発達障害のリスクを上回っているかどうかは不明である。

*日本国内では未発売

2021年04月 [no.2(248号)]

(岩田 祐輔)

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