注意欠如・多動症を持つ小児における社会的スキル障害に関する研究:自閉スペクトラム症児と健常児との比較研究

ENCEPHALE, 46, 326-333, 2020 Étude des Altérations des Habilités Sociales chez des Enfants Ayant un Trouble Déficit de l’Attention/Hyperactivité: Comparatif avec des Sujets Contrôles et des Sujets Présentant un Trouble du Spectre de l’Autisme. Léger, M., Piat, N., Jean, F. A., et al.

背景

注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)児の社会的スキルへの配慮は,多動性の有無にかかわらず,児のケアを行う上で重要である。特に,ADHD児の感情認知障害は社会的スキル欠如の根底にある,機能的認知障害の中で認められ,成人してからも継続する障害である。この問題は,心の理論や共感力の障害との関連を示唆する報告もあり,社会的対応力尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)を用いて評価することができる。また,感情の中でも特に恐怖と怒りの感情の認知の難しさが特徴的である。

著者らは,ADHDにおける社会的スキル障害は自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)のそれに相当するものであるものの弱いことと,またこの障害がADHDにおいて自己の中に存在することにより,もしくは外に表出されてしまうことにより日常生活能力に影響を及ぼしている可能性があるという仮説を立て,本研究を行った。

目的

本研究の目的は,フランスにおけるADHDの社会的スキルを特徴づけ,健常者及びASDと比較することである。

方法

ボルドーにおいて,ADHD児88名(精神刺激薬未投薬),ASD児24名,健常対照者207名の3群合わせて319名(6~12歳)を被験者として募集した。評価にはSRS,注意欠如・多動症評価尺度第四版(ADHD Rating Scale version Ⅳ:ADHD-RS Ⅳ),ワイス機能障害評価尺度-親レポート(Weiss Functional Impairment Rating Scale-Parent report:WFIRS-P),小児行動チェックリスト(Child Behavior Checklist:CBCL)を用いた。

結果

健常対照群と比較して,ADHD群は社会的スキルの有意な悪化を示し,ADHD群の平均総SRS評点は健常対照群とASD群の中間であった(ADHD群:65.31±20.99,健常対照群:37.15±16.37,ASD群:95.75±30.83;p<0.05)。また,SRSの五つの下位項目を考慮に入れると,障害のパターンはADHD群とASD群の間で質的に類似しているように見えた。最後に,ADHD児の社会的スキルの障害がより重度であるほど,障害の重症度(ADHD-RS Ⅳ)が高く,日常機能障害(WFIRS-P)がより重度で,素行上の問題(CBCL)がより頻繁であった。

結論

本研究の結果から,ADHDにおいて社会的スキル障害が認められることがわかった。これはASDに比べて顕著ではないものの同じ領域の能力に影響を与えるものであり,両疾患間における,もしくは個々のADHD患者間における障害部位の関係性を示唆し,両疾患は質的に似た症状を持つという特徴を,わずかながらも明らかにすることができた。今後は,ADHDにおける社会的スキル障害の系統的評価が必要である。

2021年04月 [no.2(248号)]

(小泉 輝樹)

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