小児・若年者の不安,抑うつ,強迫症,心的外傷後ストレス障害に対する転帰尺度の標準セットに関する国際的コンセンサス

LANCET PSYCHIATRY, 8, 76-86, 2021 International Consensus on a Standard Set of Outcome Measures for Child and Youth Anxiety, Depression, Obsessive-Compulsive Disorder, and Post-Traumatic Stress Disorder. Krause, K. R., Chung, S., Adewuya, A. O., et al.

抑うつと不安は,それぞれ世界人口の推定4.4%と3.6%に影響を与えている。それらに対するメンタルヘルスケアの提供も拡大しているが,小児や若年者におけるこれらの障害の有病率は低下していない。その重大な原因として,メンタルヘルスケアの効果向上には適切な転帰の測定が重要であるにもかかわらず,その転帰に関するコンセンサスが欠如していることが挙げられる。この課題を解決するために,専門家のコンセンサスをもとに,治療転帰に関する標準セットが考案されてきた。International Consortium for Health Outcomes Measurement(ICHOM)は,臨床のための疾患別標準セットの開発を専門とする非営利団体であり,成人の不安と抑うつに関するコンセンサスに基づいた治療転帰の標準セットをすでに開発しており[患者健康質問票9(Patient Health Questionnaire-9:PHQ-9),全般性不安症7項目尺度(Generalised Anxiety Disorder 7-item Scale),WHO Disability Assessment Scheduleを含む],それは14歳以降の若年者も対象としている。本稿は,更に,6~24歳の小児及び若年者における不安,抑うつ,強迫症,心的外傷後ストレス障害に特化した治療転帰の標準セットに関する推奨事項を報告したものである。

方法

今回のICHOMにおけるワーキンググループは,13ヶ国からの27名の専門家[当事者,保護者(親や介護者),臨床家,研究者が含まれた]で構成された。ワーキンググループは,2018年10月~2019年12月の期間に8回の遠隔会議を行い,3度のDelphi法(グループのコンセンサスを得るための手法)を実施し,匿名投票を繰り返すことでコンセンサスを形成し,治療転帰の推奨事項を作成した。具体的には,Core Outcome Measures in Effectiveness Trials(COMET) initiativeによる方法論的勧告に沿って,257件の治療転帰研究の系統的なスコーピングレビュー等を通じて,70の転帰候補を特定した。次に,テーマに関連する107の尺度を系統的に評価し,選択した転帰を経時的に追跡するのに最も適した尺度を選定した。選定のための評価基準は,それらの尺度が,関連性(選択した転帰領域を包括的に網羅していること),実現可能性と許容性(20分未満で完了できること,紙と鉛筆の形式を含む臨床現場での使用が自由にできること,小児と若年者を対象として検証済みのものであること,少なくとも第二言語への翻訳がなされていること),心理測定性能(評価者間または再試験の信頼性が0.70超,内的整合性が0.70超,変化に対する感度の証拠)とした。

結果

最終的な標準セットに含まれたのは,以下の七つの転帰指標であった。①小児の不安抑うつ尺度改訂版(Revised Children's Anxiety and Depression Scale):不安と抑うつの症状評価,②小児の強迫症状評価票(Obsessive Compulsive Inventory for Children):強迫症の症状評価,③小児の改訂出来事インパクト尺度(Children's Revised Impact of Events Scale):心的外傷後ストレス障害の症状評価,④コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia Suicide Severity Rating Scale):希死念慮と自殺関連行動評価,⑤KIDSCREEN-10:機能評価,⑥小児の総合評価尺度(Children's Global Assessment Scale):機能評価,⑦Child Anxiety Life Interference Scale:機能評価。

推奨される症例因子

標準セットの目的は,転帰の比較及びベンチマークの策定を容易にすることであるが,そのためには,母集団及び介入設定のバラつきを調整するための追加データの収集が必要である。よって,ワーキンググループのコンセンサスでは,患者本人・保護者・臨床家による報告を組み合わせて,人口統計学的因子,臨床的因子,複雑性因子(トラウマ歴,精神科家族歴),介入因子も記録すべきとされた。

結論

ワーキンググループの推奨に関する一般化可能性と許容性を確立するために,公開ウェブ調査を実施し,45ヶ国から463名の臨床家・研究者・政策立案者,デンマーク・英国・米国から24名の若年者及び保護者による外部評価を実施した。なお,標準セット参照ガイド,チラシ,データ辞書は無料で“ICHOM Connect”(connect.ichom.org)からアクセス可能である。

2021年04月 [no.2(248号)]

(吉田 和生)

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