双極性障害における季節性の臨床的な相関因子:特定を要する特定因子か?

ACTA PSYCHIATR SCAND, 143, 162-171, 2021 Clinical Correlates of Seasonality in Bipolar Disorder: A Specifier That Needs Specification? Fico, G., de Toffol, M., Anmella, G., et al.

背景と目的

双極性障害(BD)の症状が季節により変動することは古くから世界中で観察されており,躁状態は春から夏にかけて,うつ状態は初冬に増悪すると言われている。しかし,BDの季節性に関わる臨床的特徴は不明な点も多く,BDの亜型によって異なるパターンが存在するか否かも明らかではない。本研究の目的は,BD患者の大規模コホートにおけるDSM-5の季節性特定因子の有病率,及びBDの季節的な経過中の明確なパターンを疾患の特徴や経過に応じた亜型に分類できるかどうかを明らかにすることである。

方法

本研究では,1998年10月~2020年4月に,バルセロナ大学病院のBD病棟において,系統的前方視的追跡調査に登録された全患者を対象とした。主な組み入れ基準は18歳以上,DSM-5に基づくBDⅠ型(BD-Ⅰ)またはBDⅡ型(BD-Ⅱ)の診断とし,除外基準は基準時点の評価時における緊急の治療を必要とする重度の器質性疾患の存在,重度の認知・運動・視覚障害の存在とした。優位極性は病相期の2/3以上を占める極性に基づいて定義した。

季節性特定因子に関してはDSM-5及びDSM-Ⅳ-TRの特定因子基準に基づいて評価した。また,季節性特定因子を有する患者においては,その季節及び再発したエピソードの種類についても評価した。

結果

合計708名の患者が対象となり(女性:389名,平均年齢は45.3歳±14.2),そのうち,BD-Ⅰが503名(71%),BD-Ⅱが205名(29%)であった。DSM-5の季節性の基準を満たしたのは全体の16.5%(117名),DSM-Ⅳ-TRの基準を満たしたのは13.5%(96名)であった。

季節性特定因子の有無を基準に2群間を比較したところ,季節性特定因子と正の関連を示したのはBD-Ⅱの診断,未決定の優位極性,気分障害の家族歴,セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)による治療,クエチアピンによる治療,生涯のうつ病エピソード数,軽躁エピソード数,全気分障害エピソード数であった。また,負の関連を示したのは躁の優位極性,精神病症状,攻撃的行動,自己に対する攻撃的行動,他者に対する攻撃的行動,躁病エピソード数,精神科入院数であった。

年齢,女性の性別,BD-Ⅱ,精神病症状,攻撃的行動,未決定の優位極性,気分障害の家族歴を独立因子としてロジスティック回帰分析を行ったところ,BD-Ⅱが最も季節性特定因子と関連し[オッズ比(OR)=2.23,95%信頼区間(CI):1.40-3.55,p=0.001],次いで気分障害の家族歴(OR=1.97,95%CI:1.29-3.01,p=0.002),未決定の優勢極性(OR=0.44,95%CI:0.28-0.70,p=0.001),攻撃的行動(OR=0.42,95%CI:0.23-0.75,p=0.004)の四つが季節性特定因子に関連する因子であった。

季節性特定因子を有する患者のパターンは次の六つのいずれかであった。すなわち,秋冬期うつ病(34名,29.05%),春夏期軽躁または躁病(25名,21.36%),春夏期軽躁または躁病+秋冬期うつ病(21名,17.94%),春夏期うつ病(16名,13.6%),秋冬期軽躁または躁病(14名,11.9%),春夏期うつ病+秋冬期軽躁または躁病(2名,1.7%)。

結論

本研究によりBDの季節性と関連する臨床因子が同定された。季節性は,出現するエピソードを予測するのに役立つかもしれないが,治療は困難かもしれない。したがって,季節性のパターンを持つ患者では,エピソードの予測が容易かもしれないが,一方で,その治療はより困難かもしれない。

季節性パターンを有する患者の方がそうでない患者よりも多くのエピソードを有していたという事実は,季節性エピソードは予測可能ではあるが,予防は困難であることを示唆している。

2021年04月 [no.2(248号)]

(内田 貴仁)

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