抗うつ薬開始後におけるうつ病から双極性障害への診断変化の予測

NEUROPSYCHOPHARMACOLOGY, 46, 455-461, 2021 Predicting Change in Diagnosis from Major Depression to Bipolar Disorder after Antidepressant Initiation. Pradier, M. F., Hughes, M. C., McCoy, T. H. Jr., et al.

背景と目的

双極性障害においては気分症状の発症から管理開始までに平均6年を要し,その間,気分安定薬の処方なしに抗うつ薬が処方されることで気分症状のリスクが上昇し,更には抗うつ薬処方は治療抵抗性や自殺行為にも関連する。

うつ病性障害から双極性障害への診断変化は,症状の見逃しでなく,躁エピソードの前に抑うつ症状を示す患者が実際いるように,明確な躁/軽躁エピソードが現れていないことを反映しているのかもしれない。

そこで本研究では,うつ病性障害から双極性障害への診断変化のリスクが高い患者を同定できる分類モデルを開発し,その妥当性を検証することを目的とした。

方法

二つの大規模な学術医療センターに所属する精神科と非精神科の診療ネットワークから得られた外来臨床データを用いて,後方視的カルテコホート研究を行った。参加者は,18~80歳で,2008年3月~2017年12月に少なくとも1種類の抗うつ薬を投与されており,うつ病または特定不能のうつ病性障害の診断を受け,双極性障害の診断を受けていない者とした。

主要転帰は,指標となる抗うつ薬の処方から3ヶ月以内に双極性障害のICDコードが一つ以上存在することと定義した。

この転帰を予測するため,診断・処置コード及び社会人口統計学的特徴にロジスティック回帰とランダムフォレストを用い,識別と較正はホールドアウトされたテストセットで評価した後,独立した2番目の学術医療センターで評価した。

結果

1種類以上の抗うつ薬を投与されていたのは67,807名で,このうち3ヶ月以内に双極性障害の診断を受けたのは925名(1.36%)であった。診断・処置コードを組み込んだモデルでは,曲線下面積(AUC)値は0.76(0.73~0.80の範囲)に達した。個々のリスク階層別の双極性障害移行率を求めると,予測された双極性障害移行リスクに応じた患者の分類モデルの有用性が証明された。

考察

過去のカルテベースの予測モデルが見つからなかったため,本研究と先行研究との直接比較はできないものの,類似したデザインを用いた双極性障害への移行に関する先行研究とおおむね一致した結果であり,移行率もまた,構造化面接や医師による系統的評価を用いた先行研究と同様であった。今回の結果は,双極性障害診断の確実性を高めるものであるが,躁症状を注意深く経時的に評価することの代替となるものではない。

本研究の限界としては,診断コードのみに基づいているため診断の信頼性が低いかもしれないこと,予測因子が処方薬による交絡である可能性(複数の診断の可能性があるが一つの診断しか記載されていないなど),AUC値が0.8未満であることなどが挙げられる。

今後は,更なる検証を行うことによって,抗うつ薬開始後にハイリスク患者を追跡する強度をより詳細に調整できるようになるであろう。

2021年04月 [no.2(248号)]

(高橋 希衣)

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