抗うつ薬の治療効果を予測する機械学習アルゴリズムの組み合わせ

ACTA PSYCHIATR SCAND, 143, 36-49, 2021 Combining Machine Learning Algorithms for Prediction of Antidepressant Treatment Response. Kautzky, A., Möller, H.-J., Dold, M., et al.

背景

これまで様々なうつ病治療反応の予測因子が報告されてきたが,重症度や併存精神疾患といった確立された因子でさえ臨床現場の治療に影響は与えておらず,症状によって最初の抗うつ薬や最適な補強薬を決める個別化治療の根拠もない。

そこで本研究では,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),三環系抗うつ薬(TCA),抗精神病薬(AP)及びリチウム補強に特化した治療効果の多変量予測モデルを作成した。更に,治療効果予測のための教師あり学習と,データ駆動に基づいた反応表現型を定義するための教師なし学習の組み合わせを利用して,うつ病症状の亜型と従来の17項目版ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D17)総点における予測を比較した。

方法

ドイツにおけるうつ病患者の縦断的特徴と治療転帰を評価した大規模自然経過研究のデータを用い,うつ病性障害患者1,079名を組み込んだ。入院治療8週までのHAM-D17変化により,寛解と反応を定義した。教師なし学習として,Rのパッケージ「ClusOfVar」を用い,基準時点のHAM-D17からデータ駆動型の反応の亜型を計算した。

教師あり学習として,Rのパッケージ「randomForest」を用い,88個の予測因子によって,(i)反応と寛解,(ii)症状クラスターにおける反応,(iii)SSRI,TCA,AP及びリチウム補強の層別化における反応,という転帰表現型を分類するモデルを構築させた。なお,予測因子のうち,性別と年齢以外の86個は,①基準時点の重症度,②臨床的・社会人口統計学的変数,③精神病理及び身体症状,④併存精神疾患,⑤性格,のモダリティのいずれかに分類した。

結果

教師なし学習によるHAM-D17の階層的クラスタリングの結果,四つの相互区別可能な症状クラスターが明らかになった。クラスターⅠを「中核感情」,クラスターⅡを「不安と身体症状」,クラスターⅢを「睡眠」,クラスターⅣを「食欲と体重」と名付けた。

教師あり学習の結果,(i)寛解予測は最高精度0.62と低く,反応予測は最適予測精度0.69という中程度の予測性能であった。反応の最も参考になる予測因子は,基準時点のHAM-D21評点,過去の入院回数,基準時点の社会的職業的機能評定尺度(Social and Occupational Functioning Scale:SOFAS)の評点,HAM-D項目3(自殺傾向)と7(仕事と活動),モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(Montgomery-Åsberg Rating Scale:MADRS)の項目5(食欲),Association for Methodology and Documentation in Psychiatry(AMDP)の睡眠と消化器のサブカテゴリーであった。(ii)症状クラスターの反応の予測精度はクラスターⅠで0.69,Ⅱで0.56と低かったものの,ⅢとⅣではそれぞれ0.81,0.85と高かった。(iii)SSRI治療による反応予測は0.82と正確で,TCAでも0.79と同等の精度であった。AP及びリチウム補強療法による反応の予測精度は共に0.69であった。

考察

本研究結果は,高度な統計がうつ病の治療転帰を臨床的に重要なレベルで予測できることを示した。更には,治療や症状に特化したアルゴリズムを生成することができ,これによってモデルの精度を向上できることを示している。

本研究の限界として,モデル検証のための完全に独立したサンプルでないこと,自然経過研究のデータであるため患者が臨床的判断に応じて様々な薬物療法を受けたこと,オーバーサンプリングデザインは精度に偏りが生じる危険性があることが挙げられる。

2021年04月 [no.2(248号)]

(櫻井 準)

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