英国の50歳以上の成人における孤独感と抑うつ症状の関連:12年にわたる全住民ベースのコホート研究

LANCET PSYCHIATRY, 8, 48-57, 2021 The Association Between Loneliness and Depressive Symptoms Among Adults Aged 50 Years and Older: A 12-Year Population-Based Cohort Study. Lee, S. L., Pearce, E., Ajnakina, O., et al.

背景と目的

孤独感は苦痛をもたらす感情状態であり,英国においては,50歳以上の高齢者の約3分の1が孤独感を報告している。理論的モデルは,孤独感が社会的・認知的・生物学的な転帰に影響し,うつ病のリスクを上昇させることを示唆している。しかし,孤独感と抑うつ症状の関連がどの程度経時的に持続するのかは不明である。そこで,本研究では,孤独感がその後のうつ病における重篤な症状と関連しているという仮説を検証した。

参加者と試験デザイン

参加者は,English Longitudinal Study of Ageing(ELSA:イングランドの50歳以上の住民の健康・社会活動・経済活動を調査する現在進行中の調査)のサンプルを使用した。平均年齢は65歳[標準偏差(SD)10.75]であった。参加者は2016年または2017年まで,2年に1回の調査で追跡した。第2波(2004~2005年)に評価した孤独感を,本コホート研究の基準時点値として使用した(9,432名,第1波サンプルの82.8%)。

過去1週の抑うつ症状は8項目版Centre for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)で評価した。CES-Dには孤独感を問う項目が含まれるが,孤独感尺度との重複を避けるために削除した。削除前(α=0.78)と削除後(α=0.76)で,内的整合性はいずれの時点においても良好であった。孤独感は1980年版の3項目University of California, Los Angeles Loneliness Scale(R-UCLA)を用いて第8波まで測定した。主要転帰は,基準時点の孤独感評価後,第3~8波で反復測定したCES-D評点とした。副次的転帰は,CES-Dの2値版で測定したうつ病とした。交絡因子として,第2波で測定した社会的ネットワークの大きさ,社会的接触の頻度,社会的グループへの参加,知覚された社会支援の測定値,人口統計学的変数,孤独感及び抑うつ症状の多遺伝子リスクスコアなどを調整した。

統計解析

記述的分析で孤独感評点を6点以上と未満で二分し,グループの特徴を平均と標準偏差,または度数と割合で比較した。線形マルチレベル回帰を用いて,孤独感(第2波;連続曝露)とその後の抑うつ症状重症度(第3~8波;連続転帰)との関連を検討した。各波に対し,以下の10段階の回帰モデルを構築した。モデル1:孤独感と抑うつ症状の重症度との間の単変量関連を検定。モデル2:連続線形変数を追加。モデル3:二次時間変数を追加。モデル4:社会変数を追加。モデル5:多遺伝子リスクスコアを追加。モデル6:社会統計学的因子を追加。モデル7:健康指数を追加。モデル8:基準時点の抑うつ症状を追加。モデル9:孤独感と時間の相互作用を追加。モデル10:孤独感と二次時間変数の相互作用を追加。また,孤独感の影響を取り除いた場合に予防できたうつ病の割合(PAF)を算出し,ロジスティックモデルのPAFを孤独感項目の有無で比較した。

結果

対象となった参加者は9,171名で,基準時点における平均孤独感評点は4.12(SD 1.50)であった。うつ病重症度評点の平均は経時的にわずかに増加し,孤独感評点が高い(≧6)群で高かった。

単変量モデルにおいては,孤独感評点が1ポイント増加すると,全追跡期間で平均0.38[95%信頼区間(CI):0.35-0.41]の抑うつ症状の増加と関連した。経時的に抑うつ症状がわずかに増加するというエビデンスがあり(p=0.0016),非線形であるエビデンスはなかった(p=0.55)。孤独感とうつ病の関連が,年齢(p=0.33)や性別(p=0.24)によって変化するエビデンスはなかった。追跡調査が進むにつれて,孤独感と抑うつ症状の関連は減少した[相互作用項係数-0.01(95%CI:-0.019--0.009),p=0.031]。孤独感と抑うつ症状の間に12年間の間隔がある第8波においても,関連のエビデンスは残存していた。

2値のうつ病変数を用いた場合にも,孤独感とうつ病の間に同じパターンの関連が見出された。孤独感と関連するうつ病のPAFは最初の追跡(第3波)で18%(95%CI:12-24),最後の追跡(第8波)で11%(95%CI:3-19)と推定された。

孤独感に関連する社会的経験,及び多遺伝子リスクスコアの効果推定値を表に示す。

結論

基準時点の孤独感評点が高いほど,50歳以上の成人における抑うつ症状の重症度評点が高い。孤独感を軽減する介入は高齢者のうつ病を予防または軽減する可能性がある。臨床医は,孤独感がうつ病の危険因子であることを認識し,高齢者の孤独感を評価し,対処するための治療計画を検討するべきである。

2021年04月 [no.2(248号)]

表.孤独感及び多遺伝子リスクスコアに関連する社会的経験の影響推定値と95%信頼区間(主要モデルからの抑うつ症状の転帰、4,211名)

(舘又 祐治)

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