うつ病におけるマルチモーダル画像による脳の構造的・機能的異常:神経画像研究のメタ解析

AM J PSYCHIATRY, 177, 422-434, 2020 Multimodal Abnormalities of Brain Structure and Function in Major Depressive Disorder: A Meta-Analysis of Neuroimaging Studies. Gray, J. P., Müller, V. I., Eickhoff, S. B., et al.

背景

うつ病(MDD)の画像研究では,多様な脳領域における構造的・機能的異常が報告されている。しかし,先行研究の定量的メタ解析では,研究間での統計学的に有意な空間的収束を見出せていない。

座標ベースのメタ解析は,一般に複数の研究から報告された標準脳上の座標を統合する方法で,その中でも活性化/解剖学的尤度推定(ALE)では,疾患の影響を包括的に評価することが可能である。

本研究では,MDDが空間的に収束した脳の構造的・機能的異常を示すという仮説を検証するために,ボクセルベースの形態的・構造的効果(voxel-based morphometry:VBM)と安静時の機能的・生理学的効果(voxel-based pathophysiology:VBP)とで収束する徴候が認められるかどうかを評価した。著者らの仮説は,①MDD患者では対照群と比較して灰白質の萎縮が局所的に収束し,脳機能が増加したり減少したりする,②二次解析のためのプールされたデータセットを用いて評価すると異常な共局在化が改善される,③MDDの臨床的な異質性を考慮し患者のサブグループを組み立てることで,同定された脳領域の収束が促進される,というものである。

方法

PubMedやGoogle Scholar,BrainMapから,うつ病患者を対象として,血流,糖代謝,局所均一性,低周波変動振幅(Amplitude of Low-Frequency Fluctuation:ALFF)及びフラクショナルALFF(fALFF)に関するVBM研究と安静時VBP研究を検索した。検索は2018年1月までに完了した。

MDDの診断基準としてDSM-Ⅲ,DM-Ⅳ,ICD-10が用いられている研究を組み入れた。甲状腺機能低下症などの身体疾患や,精神疾患の併存がある患者が含まれる研究は除外した。ただし経過中に不安症状を呈する場合など,主要疾患がMDDである研究は組み入れた。

入力データは,健常対照群と比較したMDD患者の灰白質萎縮,機能亢進,機能低下の三つの一次メタ解析クラスに分類した。二次メタ解析では,データを一次カテゴリーにまたがって分類し,三次解析では投薬状況と精神疾患の併存の有無で分類した。全ての解析に活性化尤度推定を用いた。

結果

解析対象は152研究を報告している92報で,MDD患者2,928名が含まれた。内訳は,灰白質がMDD患者群で対照群より減少していたVBM研究が43件,安静時機能がMDD群で対照群より減少していたVBP研究が62件,増加していたVBP研究が47件であった。

一次解析では,研究間の収束は認められなかった。二次解析では,前帯状皮質膝下部,左海馬,右扁桃体,右被殻に収束性異常が認められた。投薬状況と精神疾患の併存の有無で分類した13のサブグループにおける三次解析では,二次解析に比べて収束性が改善していた。

考察と結論

本研究の限界としては,本研究の対象となったMDD患者の臨床特性が多様であり,発症年齢,罹病期間,病相回数,薬物療法が様々であったことが挙げられる。

本研究では,MDD患者において,対照群に比して有意な灰白質萎縮や脳機能の増減を示す脳領域の所見は認められなかったが,プールされた構造‐機能所見のメタ解析により,MDDにおける空間的に収束した構造的異常(VBM)と機能的異常(VBP)を示す脳領域が同定され,共局在化効果の仮説が支持された。また,対象数の減少にもかかわらず,臨床亜型によるサブグループのメタ解析から,更に収束する領域を同定した。

本研究は,MDDにおけるVBMとVBPの収束性を評価するためのマルチモーダル画像を包括的に評価した初めての研究である。MDDにおいて収束性の高い領域は,前帯状皮質膝下部,左海馬,右扁桃体・被殻,左後頭葉皮質,右中後頭部・下側頭回であった。これらの部位は,MDDに関連した再現性のある神経画像学的特徴を示している。本研究は,今後の一次データを用いたMDD研究の発展に寄与するものと期待される。

2021年04月 [no.2(248号)]

(尾鷲 登志美)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。