小児期の統合失調症型特性と高機能自閉スペクトラム症:発達の重なりと表現型の差異

SCHIZOPHR RES, 223, 53-58, 2020 Childhood Schizotypal Features vs. High-Functioning Autism Spectrum Disorder: Developmental Overlaps and Phenomenological Differences. Poletti, M., Raballo, A.

背景

自閉スペクトラム症(ASD)と統合失調症スペクトラム障害(SSD)は原型の発症時期が異なったり,現在の診断システムに従って鑑別が可能であったりするものの,発達期には診断のグレーゾーンが存在する。そこで本稿では,小児期の統合失調症型特性(childhood schizotypal feature:CSF)と高機能ASDとの重なりや相違点の可能性について焦点を当てたレビューを行い,鑑別診断のヒントを提供する。

方法

Medlineデータベースで,“autism”,“psychosis”,“schizotypal”というキーワードを使って論文を検索し,フォーカスレビューを行った。

結果

CSF,すなわちSSDへの脆弱性があるかもしれない小児期の先行状態には,思考,知覚,対人関係,空想や現実検討,ふりあそび,基本的な自己体験において年齢不相応の特徴がある。思春期には社会性が求められるため,この状態であると次第に,他者否定感,対人感応度の向上,他者に関する自発性や円滑性の喪失感,人間関係の快感減退・主体間共鳴の経験の変化などを主観的に体験していく。

CSFと高機能ASDの重なりとして,社会的な領域のCSF(小児期の社会的引きこもりが思春期になると陰性の統合失調型特性へと移行する)は,アスペルガー症候群のDSM-Ⅳ診断A基準を構成する社会的相互作用の質的障害と重なることが挙げられる。更に,知覚・思考・行動に関連するCSF(陽性の統合失調症傾向の思春期における先行特性と考えられる)は,アスペルガー症候群のDSM-Ⅳ診断B基準に記載されている,行動・興味・活動の限定的かつ反復的で常同的なパターンと,部分的に重複している可能性がある。

考察

ASDとSSDの鑑別診断として,奇行(感情過敏,極端な空想,白昼夢,奇妙な思考や行動)と社会的障害(社会的引きこもり,社会的無気力,感情の平板化,感情表現力の低下)の二側面において違いがある。CSFの奇行としては,弱い現実検討と自分の世界に浸った着色に関連し,空想,白昼夢,現実からの離脱に重きが置かれた知覚・思考・行動が現れている。一方でASDの奇行としては,ある分野で優れた能力を持つことに関連して,限定的・硬直的・常同的な知覚・思考・行動様式が認められる。また,CSFの社会的障害は,仲間との相互作用で生じる暗黙の社会ルールを把握することが広く困難であることを反映している。自己との関係における進行性の主観的共鳴(自己障害の出現)や,仲間からのわずかな他者性と疎外感の感覚,適切な言語化の困難があることから,小児期の空想の出現によって表現される。一方で,ASDの社会的障害は,同様に仲間との相互作用における暗黙の社会ルールを把握することの広汎な困難さを反映しており,自己との関係における著しい主観的共鳴が欠如している。

発達期において,CSF(SSDの症状に対する脆弱性を示唆する)と高機能ASDは症状が部分的に重複し,鑑別診断がしばしば困難となる。本稿が示すように,特に社会性の領域では,社会化(特に仲間との関係)に関連した主観的経験をより厳密に評価することによって区別できるかもしれない。陽性症状ドメインもCSFとASDで重複する可能性があるが,CSFではより一般的で早期に発症し,ASDでは思春期になってから発症する。空想については,CSFではよく肥大するのに対し,ASDでは限定的かつ常同的であることが多い。

2021年04月 [no.2(248号)]

(櫻井 準)

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