統合失調症におけるレジリエンスと心理社会的機能:系統的レビューとメタ解析

PSYCHIATRY RES, 293, 113374, 2020 The Association between Resilience and Psychosocial Functioning in Schizophrenia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Wambua, G. N., Kilian, S., Ntlantsana, V., et al.

背景

統合失調症は重度の精神疾患ではあるものの,その予後は様々であり,25~30%の患者は完全に回復し,25~45%の患者はある程度自立した生活を送れる程度に改善することが知られている。過去の研究では予後についての危険因子が強調されてきたが,保護因子についても検討する必要があるであろう。保護因子の代表として,逆境に直面した際の適応能力ないしは建設的な総合対処能力と定義されているレジリエンスは,様々な精神疾患において研究されてきた。しかし,統合失調症に対するレジリエンスの役割についてはようやく近年になって検討されるようになった。統合失調症の患者は生活上で様々な心理社会的機能の障害を経験するが,レジリエンスがこの心理社会的機能とどのように関わっているかを調べることは重要である。本稿では,統合失調症におけるレジリエンスのレベルを求め,更には統合失調症におけるレジリエンスが心理社会的機能に影響を与えるかどうかという点について検討するため,系統的レビューとそれに基づいたメタ解析を行った。

方法

PRISMAガイドラインを用いて系統的レビューとメタ解析を行った。データの収集にはPubMed,CINHAL,PsycINFO,PsycArticles,Medlineの五つの電子データベースを用いた。文献検索方法は,まず統合失調症の患者群を対象とし,レジリエンス尺度を用いてレジリエンスの評価を行い,更に心理社会的機能の評価も行っている文献に限定して抽出した。2名の著者が独立してデータを収集し,方法論の質を評価した結果,最終的に16文献が系統的レビューに用いられた。メタ解析にはランダム効果モデルを用い,統合エフェクトサイズで評価を行った。

結果

16文献のうち9文献は横断研究であり,4文献は縦断的研究,3文献は後方視的研究であった。8文献では対照群が含まれていた。地域は日本をはじめとする7ヶ国の先進国であった。

統合失調症のレジリエンスは,健常者と比較すると平均差が-9.49(p<0.00001)と極めて低いレベルであった。レジリエンスレベルについては,発症していない親族では患者群よりも高いものの健常群より低いという研究や,精神病超ハイリスク群では低いという研究もあった。一方で,統合失調症であっても高齢群や慢性期の患者群であると高いレジリエンスレベルを持つという研究や,改善した患者群では改善を認めない患者群や寛解群と比較すると顕著に高いレジリエンスレベルを示すという研究もあった。

レジリエンスによる心理社会的機能への影響の大きさは研究によって異なっていたが,総じて言えばレジリエンスが心理社会的機能にある程度の影響を与えるという結果であった。すなわち,統合失調症においてレジリエンスが高いと良好な心理社会的機能と関連することが明らかになった。

考察

本研究の問題点は研究間のデザインがそれぞれ異なるために不均一性が高いことである。また,横断研究においては,レジリエンスと心理社会的機能の因果関係を求めることは困難であることである。このような問題点はあるものの,本研究から,高いレジリエンスを持つ統合失調症の患者は,困難に直面しても適応力や対応力を持つため,心理社会的機能を改善できる可能性が示された

2021年04月 [no.2(248号)]

(船山 道隆)

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