精神病性障害患者と精神病スペクトラム症状を持つ若年者における視床核の容積

AM J PSYCHIATRY, 177, 1159-1167, 2020 Thalamic Nuclei Volumes in Psychotic Disorders and in Youths With Psychosis Spectrum Symptoms. Huang, A. S., Rogers, B. P., Sheffield, J. M., et al.

背景と目的

視床が精神病性障害の原因となっていることを示唆するエビデンスが複数得られている。それらの知見により開発された精神病の視床モデルでは,精神病の病態や認知機能障害のメカニズムに視床連合核が関与していることが示唆されている。しかしながら,これまでの研究では,連合核に特異的な構造異常については一貫したエビデンスが得られていない。

本研究では,精神病患者のコホートと精神病スペクトラム症状を有する若年者のコホートについて,視床構造異常の特徴を明らかにし,視床枕の体積が認知機能と関連しているかどうかを明らかにすることを目的とした。

方法

精神病患者のコホートは,三つの神経画像化プロジェクトのうちの一つに参加した593名から成るリポジトリ研究から得た。研究基準を満たさなかった121名を除外し,179名の健常者と293名の精神病性障害患者(統合失調症スペクトラム症状199名,精神病性双極性障害94名)を対象とした。若年者のコホートは,Genotypes and Phenotypes(dbGaP)のデータベースから取得したフィラデルフィア神経発達コホート(Philadelphia Neurodevelopmental Cohort:PNC)のうち,1,393名(精神病スペクトラム症状398名,その他の精神病理609名,定型発達386名)の若年者を対象とした。

近年開発された,妥当性のある視床核分割法と相補的ボクセルベースの形態測定法を用いて,視床核の体積を測定した。認知機能は,精神病コホートではScreen for Cognitive Impairment in Psychiatry,PNCではPenn Computerized Neurocognitive Batteryを用いて測定した。

結果

精神病群では,健常対照群と比較して,正中背核,下垂体核,腹外側核の体積がそれぞれ2.60%(p<0.001),2.74%(p<0.001),1.94%(p=0.006)小さかった。また,精神病スペクトラム症状を持つ若年者の下垂核の体積は,定型発達の若年者,その他の精神病理を持つ若年者と比較して,それぞれ2.16%(p=0.002),1.60%(p=0.01)小さかった。

認知機能との関連についての解析では,精神病群では全般的な認知機能と視床枕の体積との関連が認められたが(Rpartial=0.111,p=0.02),背内側核との関連は認められなかった(Rpartial=0.087,p=0.06)。精神病スペクトラム症状を持つ若年者でも,同様に視床枕の体積とは関連が認められ(Rpartial=0.121,p<0.001),背内側核との関連は認められなかった(Rpartial=0.035,p=0.193)。

結論

精神病性障害患者では視床連合核の体積の減少が認められた。また,精神病リスクのある若年者の大規模コホートにおいて,他の精神病理の若年者と比較して,視床連合核の体積が小さかった結果は,認知障害と精神病性障害の発症リスクが高いことと関連した神経発達異常を表していると考えられる。精神病における特異的な視床連合核の異常を特定することは,精神病リスクの早期発見に繋がり,また集束超音波療法などの新しい神経調節技術を用いた,精神病の治療や精神病患者の認知機能障害の治療のターゲットとなる可能性がある。 

2021年04月 [no.2(248号)]

(赤石 怜)

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