同意の撤回による試験中止と抗精神病薬の持効性注射剤使用との関連について:統合失調症患者の無作為化試験のメタ解析

J PSYCHIATR RES, 132, 144-150, 2021 Association Between Discontinuation due to Withdrawal of Consent and Use of Long-Acting Injectable Antipsychotics: A Meta-Analysis of Randomized Trials for Schizophrenia. Kishi, T., Sakuma, K., Okuya, M., et al.

背景

抗精神病薬の持効性注射剤(LAI-APs)は経口抗精神病薬(OAPs)よりも,統合失調症の再燃率を減らせることが報告されている。以前は注射の痛みや不快感のため,患者や臨床医がLAI-APsに対して否定的な考えを持つこともあったが,半構造化面接を用いた最近の横断研究によると,臨床医は患者のLAI-APsに対する恐れを過大評価していると報告されている。患者がLAI-APsの継続を望んでいるかどうかについての明確なデータはない。

方法

統合失調症及び統合失調関連障害の患者を対象としたLAI-APsの無作為化対照試験(RCT)を抽出し,同意の撤回による試験中止(DWC)を転帰として,二つのカテゴリーのペアワイズメタ解析を行った。一つ目はプラセボ対照群を設定したRCTのみを含むメタ解析で,対照群もプラセボの注射を受けることから,痛みや不快感など注射部位に関連した副作用以外の要因とDWCとの相関を評価することができる。二つ目はOAPsとLAI-APsとを比較したもので,注射と経口摂取という投与経路の違いがDWCに与える影響を比較することができる。更に,治療群ごとでのメタ解析を行い,LAI-APs群及びプラセボ群におけるDWCの割合を計算した。最後に,メタ回帰分析を行い,交絡因子についても調べた。

結果

52報のRCTが解析対象となった。18,675名の患者が含まれ,内訳はLAI-APs群が12,613名,プラセボ群が2,083名,OAPs群が3,979名であった。全患者の平均年齢は39.18±5.21歳で,研究期間の平均は,LAI-APs vs プラセボのRCTで13週,LAI-APs vs OAPsのRCTでは52週であった。

LAI-APs vs プラセボでは,アリピプラゾールのLAIはプラセボに比べて,DWCのリスク比(RR)が1.70[95%信頼区間(CI):1.23-2.39]と有意に高かった(p=0.002)が,フルフェナジン(RR=1.08,95%CI:0.54-2.19),オランザピン(RR=1.28,95%CI:0.64-2.56),パリペリドン(RR=0.92,95%CI:0.74-1.14),リスペリドン(RR=1.06,95%CI:0.72-1.56)のLAIではプラセボとは有意な差はなかった(表)。

LAI-APs vs OAPsでは,アリピプラゾール(RR=0.75,95%CI:0.51-1.11),フルフェナジン(RR=0.88,95%CI:0.42-1.85),ハロペリドール(RR=0.78,95%CI:0.30-2.05),オランザピン(RR=1.07,95%CI:0.78-1.47),パリペリドン(RR=1.06,95%CI:0.69-1.63),リスペリドン(RR=1.26,95%CI:0.95-1.68),zuclopenthixol*(RR=0.38,95%CI:0.04-3.95)のいずれでも,RRに有意な差はなかった(表)。

治療群ごとでのメタ解析の結果,各薬剤のLAIにおけるDWCの割合の平均は,アリピプラゾール10.98%,フルフェナジン7.65%,flupenthixol* 3.33%,ハロペリドール6.71%,オランザピン10.50%,パリペリドン10.38%,ペルフェナジン7.06%,リスペリドン10.39%,zuclopenthixol 4.45%,プラセボ11.17%で,LAI-APs全体では9.88%であった。ペアワイズメタ解析の結果,LAI-APs vs プラセボ,及びLAI-APs vs OAPsで,特に交絡因子は検出できなかった。しかし,治療群ごとでのメタ回帰分析の結果,研究が新しいこと(β=0.02),被験者における男性の割合が大きいこと(β=0.02),被験者の年齢が高いこと(β=0.05)が,LAI-APsでのDWC率の高さと有意に相関していた。

考察

第一のメタ解析の結果から,LAI-APsのDWCはプラセボと同程度であり,LAI-APsを受けている患者は,LAI-APsの副作用についてそれほど否定的に考えていないことがわかった。また,第二のメタ解析の結果,LAI-APsとOAPsとを比較してもDWCに有意な差はなく,投与経路の違いは,現在の治療を中止したいという患者の決定には影響を与えていないことがわかった。アリピプラゾールのLAIのDWCはプラセボより大きかったものの,他のLAI-APsのDWCと比べると大きな差はなかった。また,LAI-APsは男性よりも女性の方が受け入れやすいのかもしれない。

今回の解析に含まれた研究は比較的研究期間が短いため,より長期間のRCTを対象とした解析が望まれる。

*日本国内では未発売

2021年04月 [no.2(248号)]

表.二つのカテゴリーのペアワイズメタ解析の結果

(荻野 宏行)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。