統合失調症患者に対するクロザピンの併用療法と補強療法の治療戦略“精神病症状の治療反応・抵抗に関する国際エキスパート調査(TRRIP)作業班からの推奨”

SCHIZOPHR BULL, 46, 1459-1470, 2020 Clozapine Combination and Augmentation Strategies in Patients With Schizophrenia —Recommendations From an International Expert Survey Among the Treatment Response and Resistance in Psychosis (TRRIP) Working Group. Wagner, E., Kane, J. M., Correll, C. U., et al.

背景

統合失調症患者で,2剤以上の抗精神病薬を十分量・十分期間投与されても反応しない群が約20~30%おり,治療抵抗性統合失調症と定義される。1988年からあらゆる治療ガイドラインにおいて,クロザピンが治療抵抗性統合失調症に対してのゴールドスタンダードとなった。しかし,最大で60%がクロザピンに十分に反応しないとされ,これらの群をどのように治療するかについてのエビデンスは乏しい。

本研究の目的は,クロザピン治療抵抗性の統合失調症をどのように管理するかについての,専門家の意見に基づいた国際的なコンセンサスを樹立することである。

方法

2018年にイタリアのフィレンツェで開かれた国際統合失調症研究学会での,精神病症状の治療反応・抵抗に関する国際エキスパート調査(TRRIP)作業班の会合でこのプロジェクトは始まった。TRRIP作業班のメンバーはクロザピン治療抵抗性の統合失調症に対する治療について,「強く同意」「同意」「中立」「非同意」「強く非同意」からオンライン上で選択した。「同意」あるいは「強く同意」を選択した人が75%以上のものを,Delphi法に則り推奨される治療としてコンセンサスが得られたと定義した。「非同意」あるいは「強く非同意」を選択した人が75%以上のものを推奨されない治療とした。第一段階で50%を超えた場合は第2段階に進み再度評価し,75%以上の場合にコンセンサスが得られたものとした。

結果

63名のTRRIPメンバーのうち,44名が第一段階,49名が第二段階に参加した。

まず,いかなる症状に対しても,併用療法や補強療法を始める前に血中濃度350ng/mL以上で単剤治療をすることが推奨された。陽性症状・陰性症状・混合症状(陽性及び陰性症状)に対して,急性期治療では単剤療法の遅発性反応を待つことも推奨され,その期間としては平均12週であった。

併用療法及び補強療法については,陽性症状に対して,第二世代抗精神病薬(amisulpride*と経口アリピプラゾール)との併用療法,電気痙攣療法(週に3回で計12回)での補強療法が推奨された。電気痙攣療法で症状改善が見られる場合は,維持療法が推奨された。陰性症状に対する介入としては,抗うつ薬による補強療法が推奨され,エスシタロプラム/citalopram*が最も多く勧められた。認知機能に関してはコンセンサスが得られたものはなかった。希死念慮に関してはあらゆる補強療法[抗うつ薬(エスシタロプラム/citalopramとfluoxetine*)または気分安定薬(炭酸リチウムとラモトリギン)または電気痙攣療法]が推奨された。攻撃性に対しては,気分安定薬または抗精神病薬による補強療法のコンセンサスが得られた。

クロザピン治療抵抗性において,クロザピンの減量・中止,他の薬剤や電気痙攣療法などの治療への切り替え戦略については,コンセンサスが得られなかった。また,認知行動療法と心理社会的な介入が推奨された。

結論

クロザピン治療抵抗性の統合失調症は精神医学における重大な課題であり,今後もより多くの研究が期待される。

*日本国内では未発売

2021年04月 [no.2(248号)]

(黒瀬 心)

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