合成グルココルチコイドを服薬している患者における向精神薬の処方パターン

ACTA PSYCHIATR SCAND, 142, 242-248, 2020 Prescription Patterns of Psychotropics in Patients Receiving Synthetic Glucocorticoids. Yatomi, T., Uchida, T., Takeuchi, H., et al.

背景

合成グルココルチコイドは様々な身体症状に幅広く用いられている。治療抵抗性の症例にも効果的である一方,身体的・精神的な副作用には深刻かつ死に至るものもあり,大きな課題となっている。グルココルチコイドによって引き起こされる精神症状の治療法としては,減薬もしくは服薬の中断が理想的であると思われる。しかし実際には,喘息や全身性エリテマトーデス,また感染症のような急性期の状態においてはこの薬剤を用いた継続的かつ適時な治療が必要であるため,減薬や服薬中止といった選択肢は難しく,現実的でない。ゆえに,臨床現場では,これらの症状を緩和するために抗精神病薬,抗うつ薬,気分安定薬といった向精神薬がよく用いられる。しかし,これらの向精神薬が合成グルココルチコイドによる精神症状にどの程度の効果があるのかについてのエビデンスは少ない。

本研究では合成グルココルチコイドを服薬している患者への向精神薬の処方パターンを調査し,人口統計学的及び臨床的特徴を評価し,経口合成グルココルチコイドの処方と向精神薬の使用との関連を明確にすることを目的とした。

方法

本研究では,厚生労働省が提供するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)より,2015年1月分のサンプリングデータを用いた。このデータセットには,「疾病,傷害及び死因の統計分類第10版(ICD-10)」に基づく診断,処方薬,行われた医療手技名,行われた検査名,年齢,性別が含まれた。入院患者の処方は頻繁に変更されるため,合成グルココルチコイドの使用における向精神薬処方との関連性を評価するには不適であると考えられることから,本研究では外来患者に焦点を当てた。

結果

データセットに登録された581,990名の外来患者のうち,経口合成グルココルチコイドを処方されていたのは18,122名(3.11%)であり,最も頻繁に処方されていた向精神薬のクラスは抗不安薬/睡眠薬(16.7%),次いで抗うつ薬(4.0%),抗精神病薬(1.8%),気分安定薬(1.3%)であった。

合成グルココルチコイドを処方されていた18,122名及び年齢・性別をマッチさせた合成グルココルチコイドを処方されていなかった18,122名では,向精神薬の処方率はそれぞれ,抗精神病薬で1.77%(321名)と1.11%(201名),抗うつ薬で4.00%(724名)と1.98%(359名),抗不安薬/睡眠薬で16.7%(3,029名)と10.16%(1,841名),気分安定薬で1.31%(238名)と0.66%(120名)であり,合成グルココルチコイドを処方されていた群で有意に高かった。全ての向精神薬の処方率は,合成グルココルチコイドを処方されていなかった群と比較して,処方されていた群で有意に高かった(p<0.001)。

処方された合成グルココルチコイドを用量によって8群に分類したところ,用量によって処方率に有意な差が認められた向精神薬は,抗不安薬/睡眠薬(処方率は約5mg/日で最大)と気分安定薬であった。

結論

経口合成グルココルチコイドの使用と向精神薬の処方率の上昇には関連があり,その関連は必ずしもグルココルチコイドの用量に拠らないことが示された。

横断研究という性質上,因果関係は確認できないが,合成グルココルチコイドを処方されている患者については,その用量に関係なく,いかなる精神症状についても注意深い経過観察が必要であることが本研究によって強調された。 

2021年02月 [no.1(247号)]

(グナリディス 愛)

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