原発性液性免疫不全症と精神疾患及び自殺関連行動との関連と自己免疫疾患の役割

JAMA PSYCHIATRY, 77, 1147-1154, 2020 Association of Primary Humoral Immunodeficiencies With Psychiatric Disorders and Suicidal Behavior and the Role of Autoimmune Diseases. Isung, J., Williams, K., Isomura, K., et al.

背景

精神疾患や自殺の病態生理に免疫機能の障害が関与しているという仮説があるが,その根底にある機序はほとんどわかっていない。原発性液性免疫不全症(primary humoral immunodeficiency:PID)は免疫系の欠損症であり,主に抗体産生の機能不全が原因で,反復性の感染症や自己免疫疾患など健康上の問題と関連している。PIDは,液性免疫不全症及び自己免疫疾患が精神障害に及ぼす影響を解き明かすためのモデルとなる。

本研究では,免疫グロブリンなどに影響するPIDが精神疾患や自殺関連行動と関連しているかどうか,また,その関連が自己免疫疾患の併存によって説明されるかどうかを検証した。

方法

PIDは希少疾患であるため,スウェーデン全国登録簿を用いてデータを収集した。本研究の対象は1973年1月1日~2013年12月31日にスウェーデンに在住していた1,400万人以上を含む住民のコホートとし,PIDの記録がある個人は両親が同じ同胞と紐づけ,家族識別番号を作成した。

曝露変数は,生涯におけるPID,自己免疫疾患,PIDと自己免疫疾患の併存に分類した。主要転帰は,生涯における精神疾患(自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症,強迫症,摂食障害,統合失調症及び精神病性障害,双極性障害,不安症,うつ病及び他の気分障害,物質使用障害),自殺関連行動(自殺企図,自殺完遂)とした。

2019年5月17日から2020年2月21日までのデータを分析した。

結果

免疫グロブリン値に影響するPIDの生涯診断は8,378名[女性4,947名(59.0%),初診時年齢中央値47.8(四分位範囲23.8~63.4)歳]で同定された。PIDが不一致の同胞は4,776名同定された。

PIDの生涯診断がある参加者のうち,精神障害を併存していたのは1,720名であった。併存する自己免疫疾患を調整したところ,PIDは,PIDのない参加者と比べて,なんらかの精神疾患[調整後オッズ比(AOR):1.91,95%信頼区間(CI):1.81-2.01]及び自殺関連行動(AOR:1.84,95%CI:1.66-2.04)と関連していた。PIDは広域な精神疾患と関連し,AORは自閉スペクトラム症2.99,注意欠如・多動症1.99,強迫症2.19,摂食障害2.54,統合失調症及び精神病性障害1.34,双極性障害1.65,不安症2.25,うつ病及び他の気分障害2.10,物質使用障害1.62であった。

両親が同じ同胞との比較では,PIDと精神疾患及び自殺関連行動との関連は減衰したものの有意なままであり,AORはなんらかの精神疾患で1.64,自殺関連行動で1.37であった。

PIDと自己免疫疾患が併存した場合,なんらかの精神疾患と自殺関連行動のAORが最も高くなり,それぞれ2.77と2.75であった。

男女別の解析を行うと,PID患者またはPIDに自己免疫疾患を併存する患者では,男性より女性の方がなんらかの精神疾患(AOR:2.42 vs 1.65)及び自殺関連行動(AOR:2.43 vs 1.40)との関連が強かった。

限界

本研究の限界は,登録簿に基づくため,診断が実際の発症時かどうかは定かではないこと,反復性の感染症などの健康状態や,抗菌薬及び向精神薬が免疫系に及ぼす影響については評価できていないことである。

結論

PIDは,特に女性において,精神疾患及び自殺関連行動と強固に関連していた。この関連は,自己免疫疾患の併存や家族環境によって完全には説明できなかったことから,抗体機能不全が精神障害に影響を及ぼしている可能性が示唆された。精神疾患と自殺のリスクが最も高かったのはPIDと自己免疫疾患が併存する患者であったことから,相加的な効果があることが示唆された。今後の研究では,これらの関連の根底にある機序を探る必要がある。

2021年02月 [no.1(247号)]

(尾鷲 登志美)

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