心理社会的介入と免疫機能:無作為化臨床試験の系統的レビューとメタ解析

JAMA PSYCHIATRY, 77, 1031-1043, 2020 Psychosocial Interventions and Immune System Function: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. Shields, G. S., Spahr, C. M., Slavich, G. M.

目的

免疫系は多種多様な精神的・身体的疾患に関与し,世界の全死亡者数の50%以上が炎症関連疾患に起因している。免疫機能は病原体や外傷,生理学的過程等により調整されると考えられてきたが,近年ではストレス,否定的な感情,社会的援助等の心理社会的因子とも関連しているという報告が多い。慢性的なストレスは細胞性及び液性免疫を抑制し,非特異的炎症を増加させるが,社会的援助や連携のような心理社会的レジリエンス因子は,ストレスが免疫機能や健康に与える負の影響を軽減する。

心理社会的介入は,世界的な公衆衛生問題に対処するための戦略として有用である可能性があるが,どのようなタイプの介入が免疫機能を改善するのか,病状や治療理由によって効果が異なるのか,心理社会的介入の種類によって関連する免疫マーカーが異なってくるのかどうか等,不明な点が多い。これらの問題に対処するために,無作為化臨床試験(RCT)の系統的レビューとメタ解析を実施した。

方法

データベースを用いて,心理社会的介入,免疫学的転帰,介入前後の免疫学的評価を含むRCTを系統的に検索した。同定された4,621研究のうち,56研究を解析に組み入れた。

8種類の心理社会的介入[①行動療法,②認知療法,③認知行動療法(CBT),④CBT+追加/増強治療(CBT+ベンゾジアゼピンや電話・ビデオセッション),⑤死別カウンセリング/支持的精神療法,⑥多種/組み合わせ介入,⑦その他の精神療法,⑧心理教育]に注目し,これらの介入で影響を受けることが考えられる免疫機能の7種のマーカー[①炎症性サイトカイン(IL-6)や炎症マーカー(CRP)濃度,②抗炎症サイトカイン濃度(IL-10),③抗体価(IgA),④免疫細胞数(CD4),⑤NK活性(細胞毒性),⑥ウイルス量(HIV-RNA),⑦その他の免疫(幼若化反応,術後の感染症の数)]との関連性を推定した。また,9種の潜在的な緩和因子[①心理社会的介入の種類,②介入型(個人vsグループセッション),③介入期間,④免疫マーカーの種類,⑤免疫マーカーが基礎レベルか刺激レベルか,⑥治療中止から免疫マーカー測定までの時間,⑦病状や治療理由,⑧年齢,⑨性別]についても解析した。

結果

全体的なエフェクトサイズ(研究56件,エフェクトサイズ236,被験者4,060名)から,心理社会的介入は免疫機能増強と相関していることが明らかになった[ppc g = 0.30,95%信頼区間(CI):0.21-0.40,t50.9 = 6.22;p<0.001]。心理社会的介入群と対照群に無作為に割り付けてその差を計算すると,有益な免疫機能改善の差は14.7%(95%CI:5.7%-23.8%)であり,有害な免疫機能低下の差は18.0%(95%CI:7.2%-28.8%)で,有意であった。これらの関連は治療開始後6ヶ月以上持続し,年齢や性別,介入期間における違いは認められなかった。

8種類の介入の中では,CBT(ppc g=0.33,95%CI:0.19-0.47,t27.2=4.82;p<0.001)及び多種/組み合わせ介入(ppc g=0.52,95%CI:0.17-0.88,t25.7=3.63;p=0.01)が免疫機能改善と関連していた。7種の免疫機能マーカーでは,IL-6やCRPなどの炎症性サイトカインやマーカーの濃度(ppc g=0.33,95%CI:0.19-0.48,t25.6=4.70;p<0.001)と,CD56やCD4などの免疫細胞数(ppc g=0.29,95%CI:0.14-0.43,t24.0=4.03;p<0.001)のみが心理社会的介入と関連していた。

CBTに焦点を当てた副次解析では,CBTは免疫機能を増強させることと関連しており, CBT群と対照群に無作為に割り付けてその差を計算すると,有益な免役機能改善の差は14.8%(95%CI:7.5%-22.1%)であり,有害な免疫機能低下の差は33.8%(95%CI:22.5%-45.0%)で,有意であった。

結論

これらの知見は,心理社会的介入,特にCBTと多種/組み合わせ介入が免疫機能の増強と確実に関連していることを示唆しており,免疫関連の健康予後を改善する実行可能な戦略であるかもしれない。

2021年02月 [no.1(247号)]

(石﨑 潤子)

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