Adolescent Brain Cognitive Development研究を用いた,小児における出生前アルコール曝露と心理的・行動的・神経発達的転帰との関連の研究

AM J PSYCHIATRY, 177, 1060-1072, 2020 Association of Prenatal Alcohol Exposure With Psychological, Behavioral, and Neurodevelopmental Outcomes in Children From the Adolescent Brain Cognitive Development Study. Lees, B., Mewton, L., Jacobus, J., et al.

背景

妊娠中のアルコール摂取は,出生から成人期にかけて子の健康と認知的・行動的転帰に悪影響を及ぼすことが知られている。しかし,軽度~中等度の胎内アルコール曝露が神経発達及び関連行動に及ぼす影響に関するデータは少なく,結果が一貫していない。本研究は後方視的コホート調査研究であり,Adolescent Brain Cognitive Development(ABCD)研究(米国内で最も大規模な,脳機能発達と健康に関する長期研究)を用い,アルコールを自身で摂取したことのない青少年について,在胎中に母親がアルコールを摂取していた場合と,そうでない場合の心理的・行動的・神経発達的転帰との関連を次の四つの観点から検証した。①アルコールやその他の物質に曝露されていない青少年では,出生前アルコール曝露があった場合とそうでない場合との間に転帰の違いはあるか? ②アルコール曝露と本研究が対象とする諸々の転帰には用量依存性の関係があるか? ③ABCD研究において共通のアルコール曝露パターンは何か,そしてそれらは有害な転帰と関係しているか? ④脳の機能的・構造的差異は,アルコール曝露と神経行動的な転帰との関連を媒介するか?

方法

参加者は,ABCD研究バージョン2.0.1から選定した9,719名である。ABCD研究には,出生前アルコール曝露,精神病理,行動,認知機能,MRIによる脳画像のデータが含まれている。

統計学的分析では,調査対象の出生前アルコール曝露については,曝露の有無を二分変数として検討した。心理的・行動的・神経・認知的転帰を調べるために,一般加法混合モデルを用いた。更に,横断的なマルチレベル媒介分析によって,出生前のアルコール曝露と心理的・行動的・認知的転帰との間の有意な関連が,固定効果とランダム効果を調整した場合に,脳の機能的・構造的差異によって部分的に説明されるかどうかを検証した。ただし,この結果はあくまでも相関であり因果ではない。また,1年間の追跡データが利用可能であった心理的尺度については,縦断的なマルチレベル媒介分析を行い,4,169名が対象になった。

アルコール曝露パターンについては,母親が飲酒をしないパターンA,量が軽度で少しだけ減らしたパターンB(週に2.3回の飲酒),量が軽度で一定のパターンC(週に1.1回の飲酒),重度の飲酒量だがそれでも減らしたパターンD(週に5.3回の飲酒)の四つを検討した。

結果

親の報告により出生前アルコール曝露があるとされた参加者は2,518名(25.9%)であった。出生前にアルコール曝露があった青少年は,そうでない青少年に比べ,精神病理,注意欠如,衝動性,認知機能と有意に大きく関連していた。アルコール曝露があった青少年は,分離不安症[調整オッズ比(aOR)=1.21,95%信頼区間(CI):1.11-1.31]及び反抗挑戦性障害(aOR=1.17,95%CI:1.09-1.26)の長期診断を受ける可能性が高かった。出生前のアルコール曝露があった青少年は,そうでない青少年と比較して,大脳全体の総容量が大きく,局所的な皮質容積と表面積が大きいことが示された。曝露パターンでの違いについては,曝露の頻度が高いパターンDの青少年では,パターンBの青少年に比べて引きこもりなどの抑うつ的行動,注意欠如,反社会的行動,攻撃性の高さが報告された。在胎中のアルコール摂取量と青少年の心理的・行動的・神経発達的転帰との間には用量依存性の反応も見られた。人口統計学,特性をマッチさせても結果は一貫していた

脳構造の指標は,心理的転帰・行動的転帰と負の相関があり,共変量を調整した横断的モデルにおいて,出生前アルコール曝露と神経行動的転帰との間の全ての有意な関連を部分的に媒介していた。

結論

妊娠中のアルコールの摂取は,わずかではあるが有意に青少年における心理上・行動上の影響と関連している。女性に対しては,妊娠中は受胎時からアルコール摂取を控えるよう,引き続き助言すべきである。 

2021年02月 [no.1(247号)]

(舘又 祐治)

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