次回に続く? 認知症発症リスクに対する抗うつ薬のクラスごと及び抗うつ薬の種類ごとの長期治療効果:ドイツの症例対照研究

J CLIN PSYCHIATRY, 81, 19m13205, 2020 To Be Continued? Long-Term Treatment Effects of Antidepressant Drug Classes and Individual Antidepressants on the Risk of Developing Dementia: A German Case-Control Study. Bartels, C., Belz, M., Vogelgsang, J., et al.

背景

前臨床研究では,抗うつ薬,特に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が認知症転帰に有益な効果を示す可能性が示唆されているが,臨床データはまだ確定的なものではない。また,どの抗うつ薬が認知症発症リスクに影響を与えるかについての研究はほとんどない。更に,認知症発症リスクに対する抗うつ薬の治療期間の影響を示すエビデンスは稀である。

本研究では,異なる抗うつ薬が認知症発症リスクへ及ぼす影響を調べることを目的として症例対照研究を行った。具体的には,①主要4クラスの抗うつ薬[SSRI,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),三環系抗うつ薬(TCA),ハーブ系抗うつ薬],②最も多く処方されている14種類の個別の抗うつ薬,③短期・長期治療の効果,を検討した。

方法

本症例対照研究は,ドイツ疾病分析データベースのデータに基づいている。2013年1月~2017年12月の間にドイツの一般診療所1,203施設で認知症(ICD-10:F01,F03,G30,F06.7)の診断を受けた患者62,317名を対象とした。また,年齢,性別,医師,指標年によってマッチさせた対照者62,317名を対照群とした。

主要転帰は,四つの抗うつ薬クラス別,最も頻繁に処方されている14種類の抗うつ薬別での認知症の発症である。

共変量としては,糖尿病,高脂血症,虚血性心疾患,高血圧,心不全,腎不全,一過性脳虚血発作を含む脳卒中,頭蓋内損傷,てんかん,パーキンソン病,骨粗鬆症,関節リウマチ,うつ病,不安症,適応障害,身体表現性障害,健康保険の加入状況とした。

共変量である併存疾患や健康保険の加入状況を調整した後,認知症の発症と抗うつ薬の使用に関連があるかどうかについてロジスティック回帰分析を行った。

結果

抗うつ薬のクラス別に見ると,TCA[オッズ比(OR)=0.83,95%信頼区間(CI):0.80-0.86]とハーブ系抗うつ薬(OR=0.80,95%CI:0.74-0.86)のクラスは,認知症発症リスクの低下と関連していた。抗うつ薬の種類別に見ると,全てのTCA(OR=0.82~0.91)とセントジョンズワート(OR=0.77,95%CI:0.72-0.83)は,認知症発症リスクの低下と関連していた。

長期治療(2年以上)と短期治療の比較では,18の比較試験のうち17試験において,いずれかの抗うつ薬による長期治療の方が,短期治療よりも認知症発症率が低かった。特に,エスシタロプラム(OR=0.66,95%CI:0.50-0.89)とセントジョンズワート(OR=0.60,95%CI:0.51-0.70)の長期治療で,認知症リスクが最も低かった。

結論

TCA,セントジョンズワート,エスシタロプラムによる長期治療は認知症の発症率の低下と関連している可能性がある。抗うつ薬治療の忍容性が良好であれば,うつ病症状が消失していても,再燃予防以外も目的として,継続することを検討してもよいかもしれない。

本研究の限界としては,登録簿に基づく研究であるために因果関係が不明であることや,選択バイアスや情報バイアスの問題がある。一方で,サンプルサイズの大きさや,詳細に交絡因子を調整したこと,更に,抗うつ薬のクラスだけでなく個別の抗うつ薬についても詳細に分析したこと等は本研究の強みである。

2021年02月 [no.1(247号)]

(大谷 洋平)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。