2011年の東日本大震災において災害救援を行った海上自衛隊員の心理的・身体的状態

J PSYCHIATR RES, 130, 104-111, 2020 Psychological and Physical Condition of Japan Maritime Self-Defense Force Personnel Who Performed Disaster-Relief Missions After the 2011 Great East Japan Earthquake. Takeshita, S., Toda, H., Tanaka, T., et al.

背景

2011年3月11日,東日本大震災(GEJE)が発生した。地震直後,自衛隊が動員され,107,000名の自衛隊員が幅広い業務に従事し,救援活動は2011年8月31日まで続き,隊員は様々なレベルのストレスを経験した。本研究ではトラウマ的ストレスに心理的に影響を与える要素を同定し,GEJE直後に救援活動へ派遣された海上自衛隊員において,身体の状態にストレスが与えた影響を調査した。

方法

2011年3月11日~8月31日に,8,733名の海上自衛隊が災害救援のために派遣された。2011年の7~8月(M1:任務完了直後)及び2012年7月(M2:任務完了から約1年後)に,災害救援に参加した隊員に心理学的評価を含む自己記入式の質問票を送付した。この集団を「派遣群」として解析に組み込んだ。M1では心的外傷後ストレス障害(PTSD)評価尺度(IES-R),災害救援に関する質問票(Disaster Relief Questionnaire)を用いた調査が行われ,5,493名が回答した。M2ではIES-R,Kessler心理的苦痛尺度(Kessler Psychological Distress Scale:K-10),災害救援に関する質問票を用いた調査が行われ,7,044名が回答した。派遣されなかった32,270名を「非派遣群」として組み込んだ。2010年及び2012年の健康診断のデータを用いて,派遣群と非派遣群の健康診断の記録を比較した。具体的には,血液検査結果を含む健康診断データを,派遣群から3,960名分,非派遣群から15,035名分,抽出した。

健康診断結果には年齢,性別,身長・体重,体格指数(BMI),収縮期血圧,拡張期血圧,飲酒の有無,喫煙の有無,1日の喫煙回数のデータが含まれ,35歳以上では生化学検査を含む血液検査が行われていた。

結果

ロジスティック回帰分析(表)において,外傷後ストレス反応の高さは,M1においては曹士階級であること[オッズ比(OR)=2.13,95%信頼区間(CI):1.25-3.66,p=0.006],遺体との接触(OR=1.94,95%CI:1.47-2.57,p<0.001),家族が震災の影響を受けていること(OR=2.13,95%CI:1.43-3.19,p<0.001)と,M2においては遺体との接触(OR=1.45,95%CI:1.02-2.04,p=0.04),家族が震災の影響を受けていること(OR=2.60,95%CI:1.67-4.06,p<0.001)と有意な関連があることが示された。一方で,一般的な心理的苦痛の高さは,M2においては女性であること(OR=2.18,95%CI:1.29-3.68,p=0.004),家族が震災の影響を受けていること(OR=1.68,95%CI:1.16-2.43,p=0.006)と有意な相関があることが示された。

2012年の健康診断結果では,派遣群のアラニントランスアミナーゼ(ALT)及び中性脂肪の値が非派遣群と比べて有意に高かった。

結論

近年,気候の変動や地震,津波など世界各地で災害が増加しており,軍隊が災害救援を行う機会が増えている。すなわち,災害救援従事者の身体的・精神的ストレスを理解することが更に必要とされている。

2021年02月 [no.1(247号)]

表.派遣群における心理的状況の単変量解析及び多変量解析

(グナリディス 愛)

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