双極性障害と,統合失調症及び大うつ病との世代間家族伝達関係についてのスウェーデンの拡大全国養子研究

JAMA PSYCHIATRY, 77, 814-822, 2020 An Extended Swedish National Adoption Study of Bipolar Disorder Illness and Cross-Generational Familial Association With Schizophrenia and Major Depression. Kendler, K. S., Ohlsson, H., Sundquist, J., et al.

背景

双極性障害の発症リスクが,遺伝的・環境的にどのような影響を受けて世代間で伝わるのか,親の双極性障害の発症リスクが子の統合失調症やうつ病の発症にどのように関与しているのかは,いまだ明らかではない。そこで本研究では,生物学的な親子及び養子縁組した親子間において,親の双極性障害はどの程度子へと伝達されるのか,また,双極性障害と,統合失調症及び大うつ病との家族内・世代間での関連とはどのようなものか,について検討した。

方法

スウェーデンの住民登録を基に,両親と1960~1990年生まれで0~15歳の子を組み入れ,次の家族4型に分類して評価した:①実両親と同居(子2,175,259名),②生物学的父親と別居(152,436名),③継父(18~50歳年上で血縁関係のない男性)と10年以上同居(73,785名),④養子縁組(15,624名)。親子類似性については,①遺伝と養育,②遺伝のみ,③養育のみ,の3類型間で検討した。

主要転帰は,スウェーデンの登録簿における双極性障害,広域の統合失調症,大うつ病の診断とした。

親子類似性は,基本的に四分位相関を用い,重要な結果についてはロジスティック回帰によるオッズ比を用いた。データ解析は2019年10月から2020年1月にかけて実施した。

結果

対象は2,417,104名で,男性51.8%,年齢の中央値は41歳(25~60歳)であった。双極性障害の親から子への双極性障害の伝達の四分位相関は,遺伝と養育[0.25,95%信頼区間(CI):0.24- 0.26],遺伝のみ(0.22,95%CI:0.18-0.26),養育のみ(0.07,95%CI:-0.01-0.15)の3類型で統計学的な差は認められず,並列オッズ比はそれぞれ5.20(95%CI:4.91-5.50),3.66(95%CI:2.97-4.51),1.63(95%CI:0.96-2.78)であった。父母間でも統計学的な差は認められなかった。

双極性障害の親から子への大うつ病の伝達については,3類型との相関は,四分位相関が遺伝と養育では0.09(95%CI:0.07-0.10),遺伝のみが0.04(95%CI:0.01-0.07),養育のみが0.05(95%CI:0.01-0.08)で,並列オッズ比がそれぞれ1.53(95%CI:1.50-1.57),1.23(95%CI:1.13-1.34),1.25(95%CI:1.09-1.42)であった。双極性障害の親から子への広域の統合失調症の伝達については,3類型との相関は,遺伝と養育で0.12(95%CI:0.11-0.13),遺伝のみが0.12(95%CI:0.09- 0.14),養育のみが-0.03(95%CI:-0.11-0.04)で,並列オッズ比はそれぞれ1.95(95%CI:1.93-1.97),2.04(95%CI:1.75-2.38),0.76(95%CI:0.43-1.35)であった。

双極性障害の遺伝率は0.44(95%CI:0.36- 0.48)と推定された。遺伝的相関は,双極性障害と広域の統合失調症の間で0.572(95%CI:0.560- 0.589),双極性障害と大うつ病との間で0.302(95%CI:0.001- 0.523)と推定された。

限界

本研究の限界は,広域の統合失調症と双極性障害の診断が各病院での診断に依っていること,大うつ病では入院患者と外来患者が混在していることである。また,縦断的研究では,双極性障害と診断された症例が後に統合失調症に診断変更される場合がある。

結論

本研究結果より,世代間における双極性障害の伝達には遺伝的要素が重要であることが示唆されるが,養育も多少の影響を与えている可能性がある。双極性障害と広域の統合失調症における世代間伝達は,中程度の遺伝的相関関係を持ち,完全に遺伝的であるように思われる。一方で双極性障害と大うつ病間の伝達は,中程度の遺伝的相関関係を持ち,遺伝と養育による影響は同等であると思われる。

2021年02月 [no.1(247号)]

(尾鷲 登志美)

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