C-反応性タンパク濃度の上昇はうつ病の患者の自殺関連行動と関連する:メタ解析

PSYCHIATRY RES, 292, 113320, 2020 Increased C-reactive Protein Concentrations were Associated With Suicidal Behavior in Patients With Depressive Disorders: A Meta-Analysis. Chen, X., Pu, J., Liu, Y., et al.

はじめに

うつ病患者の15.9%には生涯で少なくとも1回の自殺企図が認められ,約4%の患者は自殺で死亡する。最近の研究から,炎症誘発性のサイトカインなど炎症系の生物学的マーカーと自殺関連行動の関係についての知見が得られてきている。その中でも,臨床で多く測定されているC-反応性タンパク(CRP)濃度の上昇とうつ病患者の自殺関連行動とが関連するといういくつかの研究がある。

本研究の目的は,メタ解析を用いて,自殺関連行動を持つうつ病群と持たないうつ病群ないしは健常群でCRP濃度を比較し,CRP濃度と自殺行動との関係を明らかにすることである。

方法

PubMed,Web of Science,Embaseから,「CRP」「うつ」「自殺」の三つの用語を含む368の研究を抽出した。その中から,標準化された診断基準を用いてうつ病の診断を行っており,他の精神疾患の併存がなく,対照群を設け,末梢血でCRP濃度を測定している7報の研究(計2,108名:自殺関連行動を持つうつ病395名,自殺関連行動を持たないうつ病1,578名,健常者135名)を抽出した。6報は大うつ病性障害のみを対象とし,1報はうつ病のタイプを区別していなかった。

各研究内での群間のCRP濃度の差は,標準化平均差(エフェクトサイズ)を用いて明らかにした。研究間の不均一性を考慮し,メタ解析には変量効果モデルを用いた。更に感度分析とメタ回帰分析を行い,不均一性に対処した。

結果

自殺関連行動を持つうつ病群では,自殺関連行動を持たないうつ病群と比べてCRP濃度の上昇が認められた[標準化平均差=0.68,95%信頼区間(CI):0.07-1.30,p=0.030](図A)が,不均一性は高かった(I2=95%,p<0.001)。健常群と比較した場合も,自殺関連行動を持つうつ病群ではCRP濃度の上昇が認められた(標準化平均差=1.04,95%CI:0.46-1.62,p=0.004)(図B)。この場合の不均一性は中等度であった(I2=74%,p=0.009)。

感度分析では,高感度CRPを用いて測定した例に絞ってうつ病両群での比較を行ったが,前の結果と同様に自殺関連行動を持つうつ病群でCRP濃度の上昇が認められ(標準化平均差=0.21,95%CI:0.01-0.42,p=0.040),不均一性は軽度であった(I2=44%,p=0.150)。抗うつ薬服薬例に限定して分析を行った場合と,(血漿ではなく)血清でCRPを測定した例に限定して分析を行った場合には,群間の差が認められなかった。抗うつ薬服薬例に限定して健常群と比較した場合は,自殺関連行動を持つうつ病群ではCRP濃度の上昇が認められたが(標準化平均差=1.01,95%CI:0.24-1.79,p=0.010),不均一性が高かった(I2=82%,p=0.003)。

メタ回帰分析では,CRP濃度は症例数,年齢,BMI(body mass index),性別と関連していなかった。

考察

本研究の問題点はいくつかある。まず,CRP濃度の測定は一時点であり,治療の経過の中での変化を調べていないことである。また,自殺関連行動が出現した時期(CRPの測定前であったか測定後であったか)や抑うつの重症度も考慮していない。更に,CRPの上昇に関する交絡因子,すなわち,肥満,喫煙,ストレス,睡眠障害,顕在化していないレベルの感染症などの臨床的指標を制御していない。

これらの問題点や不均一性はあるものの,本メタ解析からは,自殺関連行動を持つうつ病群では,自殺関連行動を持たないうつ病群及び健常群と比較してCRP濃度の上昇が認められることが明らかとなった。

2021年02月 [no.1(247号)]

図.主要評価項目のメタ解析

(船山 道隆)

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