うつ病患者の希死念慮に対するニューロナビゲーションガイド下の反復経頭蓋磁気刺激治療:二重盲検無作為化シャム刺激対照試験

CLIN PHARMACOL THER, 108, 826-832, 2020 Neuronavigation-Guided rTMS for the Treatment of Depressive Patients With Suicidal Ideation: A Double-Blind, Randomized, Sham-Controlled Trial. Pan, F., Shen, Z., Jiao, J. P., et al.

背景

自殺は世界中で重大な健康問題となっている。反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)はうつ病に対する急性期の治療として推奨されているが,うつ病の希死念慮に対する治療効果に関する研究は十分ではない。うつ病に対するrTMS治療では左背外側前頭前皮質(dorsolateral prefrontal cortex:DLPFC)に対する10Hzの高頻度刺激が行われている。DLPFCはBrodmannの9野と46野を含む広い領域であり,核磁気共鳴画像法(MRI)を用いたニューロナビゲーションシステムにより,個人差を考慮したより正確な刺激部位の特定が可能となる。米国食品医薬品局(FDA)はうつ病治療として1日3,000刺激のrTMSを承認しているが,刺激量は治療効果と関連している可能性が示唆されている。

本研究は,ニューロナビゲーションシステムを用いた高頻度・高強度rTMS治療の,うつ病における希死念慮に対する有効性と安全性を調べるために行われた二重盲検シャム対照試験である。

方法

13~45歳の未治療うつ病(DSM-Ⅳ)患者で,ハミルトンうつ病評価尺度24項目(HAMD-24)20点以上,ベック希死念慮尺度(Beck Scale of Suicidal Ideation:BSI)12点以上,HAMD-24の3項目で3点以上を満たす者を組み入れた。精神病症状のある者,妊婦,MRIの禁忌に該当する者は除外した。

参加者を実刺激とシャム刺激の二つの群に無作為に割り付けた。全ての参加者はエスシタロプラム10mg/日の服薬を開始した。rTMS治療にはMagstim Rapid rTMS装置を用いた。刺激部位は構造MRI画像を用いて,Brodmann 46野である(-44,40,29)(タライラッハ座標)を同定した。治療は1回のセッションで6,000刺激(10Hzで5秒間の刺激,15秒間の間隔を空けて120トレイン施行),100%運動閾値の強度で1週間行った。

希死念慮の評価はBSIを用いて,治療前,3日目,7日目に行った。主要評価項目はBSIの変化量とした。副次評価項目はHAMD-24の変化量とした。

統計解析は,治療前の重症度を共変量とした共分散分析を行い,p<0.05を有意とした。

結果

42名の参加者のデータ(実刺激群21名:平均年齢18.1歳,女性19名;シャム刺激群21名:平均年齢21.4歳,女性16名)を解析した。

実刺激群はシャム刺激群と比較して,BSI評点の変化量(平均±標準偏差)が3日目(-12.2±8.4 vs -1.6±2.3),7日目(-14.8±7.2 vs -4.7±5.3)共に有意に大きかった(共にp<0.001)。HAMD-24の変化量も同様に実刺激群で有意に大きかった(7日目で-19.2±8.7 vs -4.9±6.3,p<0.001)。

考察

本研究は,ニューロナビゲーションシステムを用いた高頻度・高強度のrTMSが未治療うつ病患者における希死念慮に対して有効であることを示した。この結果は過去に示された,治療抵抗性のうつ病や双極性うつ病における希死念慮に対するrTMSの有効性の報告と矛盾しない。過去の研究との違いは刺激部位をナビゲーションシステムで決定したこと,未治療のうつ病患者のみを対象とし,シャム刺激を対照とした二重盲検試験であることである。また,過去の研究から,DLPFCの中でも膝下部帯状皮質の活動性と負の相関を示す部位に対するrTMSの治療効果が高いことが示唆されているが,本研究で標的としたBrodmann 46野に対するrTMSの寛解率は過去の研究でも高いことが示唆されている。

本研究の限界としては,サンプルサイズが小さいこと,思春期と成人のうつ病患者の両者が参加していること,1週間の観察期間が評価期間として短かったかもしれないこと,などが挙げられる。

結論

MRIによるナビゲーションシステムを用いた高強度のrTMSは,うつ病患者において安全で急速な希死念慮と抑うつ症状の改善をもたらすかもしれない。

2021年02月 [no.1(247号)]

(髙宮 彰紘)

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