双極性うつ病及び大うつ病性障害に対する補助療法としてのN-アセチルシステイン:二重盲検無作為化プラセボ対照試験の系統的レビュー及びメタ解析

PSYCHOPHARMACOLOGY, 237, 3481-3487, 2020 N-Acetylcysteine as an Adjunctive Treatment for Bipolar Depression and Major Depressive Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis of Double-Blind, Randomized Placebo-Controlled Trials. Kishi, T., Miyake N., Okuya, M., et al.

背景

N-アセチルシステインは内因性抗酸化グルタチオンの前駆体であり,抗酸化・抗炎症・神経保護特性を有する。また,N-アセチルシステインは気分障害患者の抑うつ症状に対する治療の選択肢の一つとして期待されており,これまでに3報の系統的レビューとメタ解析があるが,二重盲検無作為化プラセボ対照試験(DBRPCT)が1試験しか含まれていない,気分障害以外の患者が含まれている,非盲検試験が含まれている,などの問題がある。N-アセチルシステインが気分障害患者の抑うつ症状に対する治療に有益であるかどうかはいまだ不明瞭であることから,著者らは,抑うつ症状を有する気分障害患者を対象として,N-アセチルシステインの有効性,忍容性,安全性を検討した新たな系統的レビューとメタ解析を行った。

方法

系統的文献レビューにおいては,試験開始時に抑うつ症状を有するあらゆる双極性障害もしくはうつ病の成人患者を対象とし,転帰には有効性と安全性・忍容性が含まれ,8週間以上の介入がなされたDBRPCTのみを対象とした。文献検索はEmbase,PubMed,Cochrane library databases上で行った。検索語には(bipolar OR major depress*) AND (random*) AND (placebo) AND (double-blind) AND (n-acetylcysteine)を用いた。また,ClinicalTrials.govと国際臨床試験登録プラットフォームを使用して,包括的に検索されていることを確認し,出版バイアスを最小化した。

主要転帰はモンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale:MADRS)と17項目ハミルトンうつ病評価尺度の評点の改善とした。また,副次転帰としてはヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale:YMRS),ハミルトン不安評価尺度(Hamilton Anxiety Rating Scale),臨床全般印象度-重症度スケール(Clinical Global Impression-Severity Scale:CGI-S),機能の全体的評定尺度(Global Assessment of Functioning Scale:GAF),社会的職業的機能評定尺度(Occupational Functioning Assessment Scale:OFAS),機能ツール障害範囲(Range of impaired Functioning Tool:LIFE-RIFT),縦断的面接追跡評価のための合理化縦断的間隔臨床評価(Streamed Longitudinal Interval Clinical Evaluation for the Longitudinal Interview Follow-Up Evaluation:SLICE-LIFE),生活の質尺度評点(Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire:Q-LES-Q)などの評点の改善,あらゆる原因による試験中止と個々の有害事象の発生率が含まれた。

連続変数は標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI),二値変数はリスク比(RR)と95%CIを算出し,解析を行った。

結果

67報の文献が抽出されたが,最終的に728名(実薬群350名,プラセボ群378名)の被験者を対象とした7報が本研究に含まれた。試験期間は8~24週の幅があり,7報のうち5報は双極性障害のみを組み入れていた。被験者の平均年齢は46.81歳で,58.45%が女性であった。

本研究の結果から,N-アセチルシステインは,プラセボと比較して抑うつ症状の評点を低下させないことが示唆された(7報,579例,SMD=-0.12,95%CI:-0.38- 0.14,p=0.38,I2=52.74%)。CGI-S評点に関してはプラセボよりも優れていた(6報,563例,SMD=-0.28,95%CI:-0.47--0.10,p<0.01,I2=14.88%)が,その他の有効性の転帰に試験群間で有意差はなかった。また,N-アセチルシステインはプラセボと比較して消化器系の有害事象の発生率の高さとの関連が認められたが[4報,537例,RR=1.79,95%CI:1.37- 2.32,p=<0.01,I2=0.00%,害治療必要数(NNTH)=7],試験群間であらゆる原因による試験中止やその他の安全性転帰に有意差はなかった。

考察

N-アセチルシステインは通常治療の補助療法として用いるとCGI-S評点を低下させることが示されたが,抑うつ症状に特異的な改善は認められなかった。一方で消化管有害事象のリスクが示された。本研究の結果は,気分障害や抑うつ症状を有する患者に対するN-アセチルシステインの補助療法としての使用については否定的である。

*ワイルドカード

2021年02月 [no.1(247号)]

(上野 文彦)

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