統合失調型パーソナリティ障害におけるアンフェタミン誘発性線条体ドパミン放出

PSYCHOPHARMACOLOGY, 237, 2649-2659, 2020 Amphetamine-Induced Striatal Dopamine Release in Schizotypal Personality Disorder. Thompson, J. L., Rosell, D. R., Slifstein, M., et al.

背景

統合失調型パーソナリティ障害(SPD)は,統合失調症と共通の症状,神経解剖学的及び遺伝的リスクの特徴を有し,統合失調症スペクトラム障害の原型であると考えられている。過去の単一光子放射断層撮影(SPECT)研究ではSPDの線条体でドパミン機能が上昇していたが,SPECTの空間分解能が比較的低く,線条体全体レベルでしかドパミン機能を調べられなかった。そこで本研究では,D2/3放射性物質[11C]ラクロプリドとアンフェタミン負荷を用いたポジトロン断層法(PET)により,未治療のSPD患者における線条体小領域内のドパミン放出能を評価した。

方法

未治療のSPD参加者と健常対照者を組み込み,SPD参加者の症状を74項目統合失調型パーソナリティ質問票(74-item Schizotypal Personality Questionnaire:SPQ)と,臨床医によるDSM-ⅣのSPD診断基準A症状(DSM-Ⅳ Criterion-A symptoms of SPD)の評価で確認した。また,SPD参加者の作動記憶を,N-back及びPaced Auditory Serial Addition Test(PASAT)で評価した。全ての参加者は,[11C]ラクロプリドを用いたPETを基準時点とデキストロアンフェタミン0.3mg/kg静脈内投与後の2回受け,更に高分解能T1強調構造核磁気共鳴画像法(MRI)を撮像した。線条体は,皮質及び皮質結合に基づく三つの機能的領域,及び五つの解剖学的関心領域(ROI)に分割した。すなわち,連合線条体[交連前脳背側尾部(pre-DCA),交連前脳背側被殻(pre-DPU),交連後脳尾部(post-CA)から成る],腹側線条体(VST),感覚運動線条体[交連後脳被殻(post-PU)から成る]である。[11C]ラクロプリドで測定したドパミンD2/3受容体利用能を反映するBPNDを用い,基準時点からアンフェタミン投与後の撮像までのBPNDの変化率(ΔBPND)を主要転帰とした。なお,この指標は,アンフェタミン誘発性ドパミン放出後における,[11C]ラクロプリドが結合できるD2/3受容体利用能の相対的な減少を反映している。

結果

未治療SPD参加者16名と健常対照者16名を組み込んだ(平均年齢37歳,男性72%)。線条体小領域または線条体全体の基準時点のBPNDやΔBPNDに,SPD参加者と健常対照者とで有意な差はなかった。SPD参加者の解析で,線条体小領域または線条体全体の基準時点のBPNDと有意に関連するSPQ評点はなく,多重比較補正後に関連する臨床医評価症状もなかった。同様に,線条体小領域または線条体全体のΔBPNDと有意に関連するSPQ評点はなかったが,VSTにおけるΔBPNDと臨床医評価の認知知覚症状との間には傾向レベルの関連が認められた(rs=0.457,p=0.075)。また,臨床医評価の解体症状の重症度がいくつかの線条体各小領域と負の関連を示し[pre-DCA(rs=-0.610,p=0.012),post-PU(rs=-0.591,p=0.016),VST(rs=-0.504,p=0.047),線条体全体(rs=-0.598,p=0.014)],VST以外は多重比較補正後も有意であった。

一方,多重比較補正後も基準時点のBPNDやΔBPNDと有意に関連する作動記憶の評点はなかった。

考察

過去の文献と異なり,本研究ではSPDにおける線条体ドパミン放出の上昇は示せなかった。しかし,VSTのドパミン放出とSPDにおける認知知覚症状の重症度との間には傾向レベルの関連が認められ,いくつかの線条体小領域におけるドパミン放出と解体症状の重症度との間には有意な負の関連が認められた。

本研究の限界は,線条体ROIで統計学的多重検定を行ったことによりタイプⅠエラーが生じたおそれがあること,サンプルサイズが小さいことによる検出力の問題とタイプⅡエラーが生じたおそれがあること,SPD参加者の大多数が他のⅠ軸・Ⅱ軸診断基準を満たしていたこと,である。

2021年02月 [no.1(247号)]

(櫻井 準)

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