様々な精神疾患における中脳ドパミン系関連領域の機能的結合性ネットワークの違い

SCHIZOPHR BULL, 46, 1239-1248, 2020 Differences in Functional Connectivity Networks Related to the Midbrain Dopaminergic System-Related Area in Various Psychiatric Disorders. Nakamura, Y., Okada, N., Koshiyama, D., et al.

背景

統合失調症において中脳辺縁系のドパミン系の過活動は陽性症状と関連していると考えられている。一方,中脳皮質系のドパミン系の低活動は統合失調症の陰性症状,うつ病(MDD)においては抑うつ症状と関連していると考えられている。双極性障害(BPD)においても躁はドパミン系の過活動,抑うつエピソードはドパミン系の低活動と関連している可能性がある。

ドパミンは主に腹側被蓋野(VTA)で合成されており,VTAは意欲や報酬系の活動性において非常に重要な役割を担っている。過去の研究結果から,統合失調症は報酬・セイリエンス・記憶・意思決定神経ネットワークと関連のあるVTAの過活動と関連している可能性がある。対照的に,MDDやBPDの抑うつ症状はVTAを含む報酬系や意欲ネットワークの低下と関連している可能性がある。

この仮説を検証するため,本研究では安静時機能的磁気共鳴画像(rs-fMRI)を用いて,MDD,統合失調症,BPD,健常者の4群でVTAを始点とした脳内の機能的結合性を比較した。

方法

本研究には,MDD 45名,統合失調症32名,BPD 30名,年齢・性別・利き手をマッチさせた健常者46名を組み入れた。対象者は全て東京大学医学部附属病院で募集した。

撮像には3T(GE Healthcare)MRIを用いた。VTAを始点としたシードベース機能的結合性解析の群間比較分析は,一元配置分散分析を用いて実施した。クラスター形成閾値はz>3.1とし,有意水準はp<0.05(family-wise error)とした。

結果

[MDD<健常者]では前頭前野にいくつかの有意なクラスターが認められたが,[MDD>健常者]では後帯状皮質,上側頭回,小脳に有意なクラスターが認められた。[BPD<健常者]では前頭前野に,[BPD>健常者]では後帯状皮質と大脳辺縁領域に有意差が認められた。[MDD>統合失調症]では両側海馬と小脳に,[MDD<統合失調症]では前頭前野に有意差が認められた。[BPD>MDD]では楔前部に,[統合失調症>BPD]では前頭前野と中心前回に,[統合失調症<BPD]では小脳と淡蒼球に有意差が認められた。

統合失調症群では,VTAと海馬の結合性は陽性症状の重症度と相関していた。この相関は抗精神病薬投与量とは無関係であり,抗精神病薬投与量を共変量として調整した後も有意であった。

考察

本研究はMDD,統合失調症,BPD,健常者の安静時におけるVTA機能的結合性ネットワークを比較した初めての研究である。MDDとBPDでは,健常者もしくは統合失調症患者と比較した場合に,共通の変化が見られた。この結果は,VTA関連の機能ネットワークの変化が,情動障害に共通する病態生理の根底にあることを示唆している。これらの結果により精神疾患の心理生理学に新たな知見が加わったが,各精神疾患の病因に対するドパミン作動系の寄与を明らかにするためには,因果関係の解析と機能画像検査を用いた臨床試験が必要と考えられる。 

2021年02月 [no.1(247号)]

(岩田 祐輔)

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