幻聴に対するAVATAR療法:治療目標の包括的説明

SCHIZOPHR BULL, 46, 1038-1044, 2020 AVATAR Therapy for Distressing Voices: A Comprehensive Account of Therapeutic Targets. Ward, T., Rus-Calafell, M., Ramadhan, Z., et al.

はじめに

精神病においてAVATAR療法という,幻聴がある人とその幻聴の内的関係性に焦点をあてた新しい治療法が登場しつつあり,幻聴のある人と迫害的な幻聴をデジタルで体現したものとの間での「対面」での対話が可能になった。2018年に発表されたAVATAR療法に関する試験では,既存治療と比較して幻聴の頻度及び苦痛について急速かつエフェクトサイズ0.8という大幅な減少が認められた。

本稿ではAVATAR療法について,その受容性と潜在的な副作用に関する情報と共に全ての治療目標を解説することを目的としている。

本治療法の完遂者53名に関して,系統的レビューを行った。先行研究から10個の治療目標(活力と自律心,自尊心/自己概念,維持,内的帰属へ向けての取り組み,同一性/社会的包摂,幻聴への思いやり,経験的離脱,悲嘆への取り組み,心的外傷への取り組み,将来計画)を同定し評価した。治療者は精神病に対する認知行動療法に携わった経験があり,1~2例の試験的な症例で監修付きの訓練を受けていた臨床家であった。

AVATAR療法の詳細

初回のセッションにおいて評価とアバター作成を行った後,週1回のセッションを6回実施した。各セッションはプレダイアログ,アクティブダイアログ,ポストダイアログの3部から成り,約60分であった。プレダイアログでは目標について復習を行った上で同意を得て,アクティブダイアログは5~15分間で,被験者と治療者は別室だが直接の会話をし(図),ポストダイアログでは振り返りをした。

アクティブダイアログは2段階から成り,主にセッション1と2で取り扱われる第1段階では,被験者はアサーティブに反応するようサポートを受けながらアバターの語りに曝露され,これにより脱感作が可能になる。それぞれのダイアログは,たとえば幻聴のある人が自己肯定感のある発言ができるようサポートされるといった「勝利」により終結した。第1段階の終盤ではアバターは融和的な立場となっていき,幻聴のある人の活力の高まりを反映するよう慎重に調整された。第2段階では自伝的文脈,意味づけ,心的外傷と無力感の経験を取り入れた定式化が行われた。

AVATAR療法の受容性

2018年に公表されたAVATAR療法に関する試験では,無作為化された75名中29%(22名)が脱落した。アバター作成後に脱落した17名中,8名のみがAVATAR療法と明確に関係があると述べた。全ての脱落は第1段階で発生しているため,曝露は慎重に実施される必要があることが示唆された。

考察

AVATAR療法ではリアルタイムで治療者としての会話とアバターとしての会話が切り替わるといった提供上の問題,声が変換されたアバターを通しての虐待や批判的・虐待的な関係性の再演といった倫理的な配慮が検討されることになる。今後は普及を視野に入れて治療を更に個別化・最適化し,効果を評価することに焦点を当てていく予定である。

結論

幻聴がある多くの人にとって,基本的にその体験は特徴づけられた「他者」とのコミュニケーションを含む社会的なものである。AVATAR療法の目的は活力,自律心,自尊心の(再)構築であり,本治療は肉体のない声の体現への曝露と,「ホットな」認知,感情,関係性の過程に対する直接的なリアルタイムでの作業などといった力強い治療環境を実現するものである。

2021年02月 [no.1(247号)]

図.AVATAR療法の構成

(菊地 悠平)

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