陰性症状主体の慢性期統合失調症患者に対するナビゲーション付き高周波数反復経頭蓋磁気刺激の認知機能改善効果:二重盲検化32週追跡研究

SCHIZOPHR BULL, 46, 1219-1230, 2000 Cognitive Enhancing Effect of High-Frequency Neuronavigated rTMS in Chronic Schizophrenia Patients With Predominant Negative Symptoms: A Double-Blind Controlled 32-Week Follow-up Study. Xiu, M. H., Guan, H. Y., Zhao, J. M., et al.

背景

統合失調症患者の認知機能障害は,抗精神病薬ではなかなか改善できないのが現状である。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は薬物療法が奏効しなかった統合失調症患者への追加治療として用いられ,特に高周波数(HF;10~20Hz)の刺激が陰性症状軽減に効果があることが知られてきた。一方でrTMSが統合失調症の認知機能障害に与える効果については,刺激部位や期間,周波数などのパラメータが研究によってまちまちであるためか,一貫した効果が見られてこなかった。背外側前頭前野(DLPFC)の活動低下が認知機能障害と関連しており,ナビゲーションシステムを用いればDLPFCを標的としたrTMSが正確に施行できるようになる。

本研究は,初めて,ニューロナビゲーションを用いて,より長期間(8週間連続)にわたり,10Hzと20Hzという異なる周波数のrTMSが慢性期統合失調症の精神病症状や認知機能障害に与える治療効果を,6ヶ月間の追跡期間を設けて比較するものである。加えて,基準時点における生化学マーカーや臨床上の指標が症状改善を予測し得るかどうかについても検討した。

方法

男性,20~60歳,(タバコを除く)薬物依存・乱用歴なし,修正型電気痙攣療法(mECT)やrTMSの治療歴なし,12ヶ月以上抗精神病薬の処方変更がなく陰性症状の改善が認められない,という条件を満たし,SCIDにて統合失調症と診断された患者120名が対象となった。基準時点で病歴聴取と身体診察を行った上で,20Hz rTMS群,10Hz rTMS群,シャム治療群のそれぞれに40名を無作為に割り付けた。研究期間中,抗精神病薬の調整は許可しなかった。追跡を完遂したのは20Hz群26名,10Hz群30名,シャム治療群33名であった。核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて左DLPFC(特にBA9,46)の位置を決定し,その位置を標的として土日を除く毎日,8週間連続でrTMSを実施した(計40回)。終了後24週間の観察期間を設けた。認知機能と臨床症状はそれぞれ,Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status(RBANS)と陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて複数回評価した。末梢血における生化学やホルモンの数値も測定した。

結果

基準時点においては群間にどのような有意差も認めなかったが,PANSSの陰性症状サブスケールと反復可能な神経心理学評価バッテリーであるRBANS得点は有意に逆相関していた。

10Hz及び20Hz群において,シャム治療群と比べて有意なRBANS得点の長期的な改善効果が認められた。また10Hz群と20Hz群を比較すると,治療終了時点では有意差が認められなかった一方で,追跡終了時点では10Hz群が20Hz群よりもRBANS得点が有意に高かった。PANSSについては群間に有意な違いが認められなかったが,即時記憶や視空間・構成の改善とPANSS陽性症状の軽減に相関が認められた。

即時記憶や視空間・構成,プロラクチンが認知機能改善の予測因子であることも判明した。重い副作用は認められなかった。

考察

高周波数rTMS治療が,統合失調症患者の認知機能にとって有益な治療法となることが示された。今後は,初発例や薬物療法が開始されていない症例における認知機能障害に対してrTMSの有効性を検討する必要がある。

2021年02月 [no.1(247号)]

(滝上 紘之)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。