オピオイド拮抗薬は統合失調症の症状軽減に関わる:症例対照研究のメタ解析

NEUROPSYCHOPHARMACOLOGY, 45, 1860-1869, 2020 Opioid Antagonists are Associated With a Reduction in the Symptoms of Schizophrenia: A Meta-Analysis of Controlled Trials. Clark, S. D., Van Snellenberg, J. X., Lawson, J. M., et al.

背景

統合失調症の陽性・陰性症状に対する新規治療薬が切実に必要とされているにもかかわらず,その標的となり得る内因性オピオイド系(ミュー,カッパ,デルタの3受容体亜型を含む)の研究は少ない。先行研究の結果は,有意な改善が認められたものから傾向が有意でなかったあるいは効果なしとしたものまで,幅が広く一貫していない。これらの研究間ではデザインと質に大きな差があり,多くの試験では検出力が大幅に低く(平均14.4例),これらの化合物の治療効果の可能性に関する明確な知見を叙述的レビューから導き出すことは困難である。そこで,著者らは潜在的な治療シグナルをより明確に評価するため,統合失調症におけるオピオイド拮抗薬を用いた研究のメタ解析を行った。

方法

文献検索はPRISMAガイドラインに沿って行った。1970年~2019年2月の間に英文誌に公表された,追跡期間を問わず,統合失調症,統合失調症様障害,統合失調感情障害と診断された患者に対し,ナロキソン,naltrexone*,ナルメフェン,ブプレノルフィンを投与したプラセボ対照研究を対象とした。単盲検もしくは二重盲検化されていることを条件としたが,一方で無作為化は条件に加えなかった。

オンラインデータベース(Ovid Medline,PsychINFO,PubMed,EMBASE,Cochrane library/CENTRAL,Scopus,Web of Science,Google Scholar)上で文献を検索した。検索語には“schizophrenia and naloxone, or naltrexone, or nalmefene, or buprenorphine”を使用した。治療後の実薬群とプラセボ群とを比較し,統合失調症の陽性・陰性・全般的・総合的な症状の評価尺度における変化を転帰とした。

全試験の平均エフェクトサイズ(Hedgeのg)を標準ランダム効果モデルにて算出した。更に,補正加速ブートストラップモデルを用いてp値と信頼区間を算出した。

結果

従来型のデータベースから7,963報,Google Scholarから21,500報の論文が同定された。最終的に27報の論文による30の盲検化プラセボ対照試験,434名の患者が本研究の解析に含まれた。30試験の薬剤の内訳は,ナルメフェンとブプレノルフィンがそれぞれ1試験であり,他28試験ではナロキソンもしくはnaltrexoneが使用されていた。

全薬剤を合わせた解析(表)において,標準ランダム効果モデル[G=0.26,p=0.02,k=22,信頼区間(CI):0.03-0.49]と包括的なブートストラップモデル(G=0.26,p=0.0002,k=30,CI:0.11-0.51)の双方で全ての尺度に対する有意な効果が得られた。陽性症状についてはランダム効果(G=0.33,p=0.015,k=17,CI:0.07-0.60)とブートストラップモデル(G=0.32,p<0.0001,k=21,CI:0.15-0.65)の両方で有意な効果が認められた。陰性症状に関しては,平均エフェクトサイズは大きいものの,検出力が極めて低かった(ブートストラップモデル,G>0.66,k=6)。総合的な症状に対してはブートストラップモデルにおいて有意な効果が認められた(G=0.19,p=0.015,k=19,CI:0.04-0.35)。

考察

入手可能な試験の数が限定的なためこれらの知見はまだ予備的なものではあるが,大規模な無作為化二重盲検試験を実施して,オピオイド拮抗薬の単剤治療とプラセボの比較,あるいは標準的な抗精神病薬治療とのオピオイド拮抗薬併用療法と抗精神病薬単独治療との比較を行って統合失調症の陽性症状・陰性症状の両方に対する有効性を解明し,またもし有効であればオピオイド拮抗薬の最適な用量及び投与法を解明するための系統的な研究が必要であることが,本研究の結果により強く支持された。

*日本国内では未発売

2021年02月 [no.1(247号)]

表.全薬剤を合わせたメタ解析の結果

(上野 文彦)

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