急性期統合失調症を対象とした第二世代抗精神病薬試験の実薬群及びプラセボ群における試験中止に関連する因子:メタ回帰分析:抗精神病薬試験の中止

J PSYCHIATR RES, 130, 240-246, 2020 Factors Associated With Discontinuation in the Drug and Placebo Groups of Trials of Second Generation Antipsychotics for Acute Schizophrenia: A Meta-Regression Analysis: Discontinuation in Antipsychotic Trials. Kishi, T., Matsuda, Y., Sakuma, K., et al.

背景

急性期の統合失調症患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験(DBRPCTs)で重要な転帰の一つは,試験の中止である。しかし,試験の中止にどのような因子が影響を与えるかについては,十分なエビデンスがない。本研究では,急性期の統合失調症の成人患者を対象としたDBRPCTsのメタ回帰分析を行い,抗精神病薬による治療群での中止,プラセボ群での中止,及び両群間の中止の差と関連する因子を調べた。

方法

急性期の統合失調症及び関連障害群の成人患者のみを含む,第二世代抗精神病薬(SGAs)のDBRPCTsを対象とした。追跡期間が4~12週のものとし,治療抵抗性及び初回発症例を含む研究は除外した。

治療企図(ITT)解析を用いたデータに対して,変量効果モデルを用いた以下の2種類のメタ解析を行った。一つは,SGAs及びプラセボのそれぞれの単独投与群にメタ解析を行い,全ての原因を含む中止率の平均を求めた。もう一つは,SGAs群とプラセボ群を比較し,全ての原因を含む中止に対してペアワイズメタ解析を行い,リスク比(RR)を計算した。

結果

77の研究が適格基準を満たし,96の比較試験と22,678名の参加者が含まれていた。

全ての原因を含む中止率は,SGAs群では37.0%[95%信頼区間(CI):34.6-39.4],プラセボ群では46.9%(95%CI:44.2-49.6)であり,SGAs群の方が有意に低かった(RR:0.80,95%CI:0.76-0.83)。

中止の危険因子としては,被験者特性に関するもの,研究デザインに関するもの,薬剤に関するものが計31個抽出された。このうち,SGAs群でもプラセボ群でも,陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)評点の基準時点からの改善が小さいことが,高い中止率と有意に関連していた(図A,図B)。また,SGAs群でPANSSの改善がより大きく,プラセボ群でPANSSの改善がより少ないほど,両群間での中止率の差は有意に広がった(図C,図D)。同様に,SGAs群での奏効率が高いと,SGAs群とプラセボ群での中止率の差は有意に広がった。

体重増加はSGAs群でもプラセボ群でも中止率とは有意な関連を示さなかった。しかし,体重増加リスクのあるSGAsを用いた研究を,体重増加リスクのないSGAsを用いた研究と比較すると,SGAs群とプラセボ群との間での中止率の差が有意であった。

参加者に男性の割合が少ないこと,基準時点のPANSSの評点が高いこと,臨床全般印象度-重症度(CGI-S)での基準時点からの改善が大きいこと,研究期間が短いこと,退薬期間が長いこと,米国以外で実施された研究であること,研究開始が最近であることは,いずれもSGAs群及びプラセボ群の両方で低い中止率との関連が見られたが,両群間での中止率の差とは関連が見られなかった。

考察

SGAs群とプラセボ群の両方で中止率と有意に関連する因子は,SGAs群とプラセボ群の間の中止率の差とは関連を示さなかった。一方,SGAs群あるいはプラセボ群のどちらか一方の中止率とのみ関連を示す因子は,SGAs群とプラセボ群の間の中止率の差とも関連を示した。

急性期統合失調症のDBRPCTsでは,特にSGAsの治療効果及び体重増加が,SGAs群とプラセボ群の間の中止率の差に影響しているようである。

2021年02月 [no.1(247号)]

図.回帰散布図

(荻野 宏行)

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