双極性障害における自殺の危険因子:患者12,850名でのコホート研究

ACTA PSYCHIATR SCAND, 138, 456-463, 2018 Risk Factors for Suicide in Bipolar Disorder: A Cohort Study of 12 850 Patients. HANSSON, C., JOAS, E., PÅLSSON, E., et al.

背景

双極性障害患者は自殺のハイリスク群であり,その自殺率は一般人口の17~20倍である。過去の系統的レビューでは男性,自殺未遂の既往,絶望感が双極性障害における自殺の危険因子であることが示されていたが,サンプル数は少なかった。

スウェーデンの双極性障害のための国の登録データベース(Swedish National Quality Register for Bipolar Affective Disorder:BipoläR)では患者の追跡が1年ごとに行われていることから,このデータベースを使用することで,自殺の予測因子を同定するための前方視的研究を行うことができる。

方法

BipoläRは2004年に双極性障害患者の治療の質を改善するために設立された。本研究では2004~2013年に登録された全ての患者を対象とした。また,死亡原因登録のデータベース(Cause of Death Register)から対象患者の自殺を同定した。ハザード比(HR)はCox比例ハザードモデルを用いて算出した。

結果

12,850名(男性4,844名,女性8,006名)の患者が対象となった。そのうち90名(男性55名,女性35名)が追跡期間中に自殺した。追跡期間は平均4.05年間(範囲1~10年)であった。

年齢・性別を調整した結果,有意だった自殺の予測因子(HR)は,男性(2.56),独居(2.45),自殺企図の既往(4.10),その他の精神疾患の併存(2.64)[うち,物質依存症の併存(3.79),不安症(1.91),パーソナリティ障害(2.49)],最近の感情エピソード(抑うつもしくは躁)(2.39),最近の抑うつエピソード(2.24),犯罪歴(4.43),精神科入院治療(2.79),強制入院(3.50)であった。

また,男女差も認められ,男性では独居,物質依存症,強制入院,少なくとも1回の感情エピソードが自殺の予測因子となったが,女性ではそうではなかった。女性では犯罪歴,パーソナリティ障害,少なくとも1回の抑うつエピソードが自殺の予測因子となったが,男性ではそうではなかった。

考察

双極性障害の自殺の危険因子及びその男女差を同定した。これらのいくつかは過去の研究で示されたものと同様である。また併存する精神疾患の詳細として,物質依存症やパーソナリティ障害,不安症が自殺と関係していた一方で,摂食障害との関係は認められなかった。

精神科入院治療は重症度の指標であり,自殺と関連していたが,これはまた入院患者が十分に治療されないまま退院したこと,もしくは適切な追跡ができていなかったことを示唆するため,臨床的に重要な教訓である。

また,双極性障害の症状,特に抑うつエピソードが自殺と関係していたが,このことは,先行研究で示された抑うつ症状が自殺と関係した一方で躁症状とは関係しなかったこととも一致する。一方で,双極性障害の型(Ⅰ型,Ⅱ型など)は自殺と関係しなかった。

著者は以前の研究で双極性障害における自殺企図の危険因子を調査しており,多くは自殺既遂の危険因子と共通していたが,自殺企図では更に発症年齢が低いこと,摂食障害の併存,心理社会的及び環境的な問題,暴力行為の既往が関係していた。

自殺の危険因子を知ることは,双極性障害の治療者にとって重要である。

2019年2月 [no.1(235号)]

(是木 明宏)

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