米国における成人DSM-5大うつ病性障害の疫学とその特定項目

JAMA PSYCHIATRY, 75, 336-346, 2018 Epidemiology of Adult DSM-5 Major Depressive Disorder and Its Specifiers in the United States. HASIN, D. S., SARVET, A. L., MEYERS, J. L., et al.

目的

DSM-5では大うつ病性障害(MDD)エピソードに特定項目(不安性の苦痛を伴う,混合性の特徴を伴う)が追加された。DSM-5診断基準でのMDDの罹患率や人口統計学的特徴及び他の精神疾患の併存,機能,治療法などの臨床的特徴との関連について最新の情報を得ることを目的として調査を行った。

方法

施設に入居していない18歳以上の成人36,309名を対象として,米国で2012~2013年に実施された“アルコール及び関連状態の全国疫学調査(National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions:NESARC)-Ⅲ”のデータを利用した。

Alcohol Use Disorder and Associated Disabilities Interview Schedule 5(AUDADIS-5)を用いて,構造化面接により,DSM-5の気分障害,不安症,物質使用障害,パーソナリティ障害を評価した。

大うつ病エピソードは,DSM-5診断基準の9項目のうち,抑うつ気分かアンヘドニアか希望の消失が認められ,これらを含めて合計で5項目以上の症状が2週間以上持続するものとした。MDD(生涯)は,大うつ病エピソードを生涯で1回以上経験している者のうち,DSM-5躁病・混合性・軽躁エピソードを満たさず,物質誘発性及び医原性障害を除外できる者と定義した。

DSM-5では各重症度の分類にMDDの症状の数を用いていないため,本研究では,軽症は5項目,中等症は6~7項目,重症は8~9項目を満たすものと定義した。不安/苦痛の特定項目としては,エピソード中に,(1)興奮や緊張を感じる,(2)異常に落ち着かない,(3)心配が原因の集中困難,(4)何か恐ろしいことが起きそうな恐怖,(5)自分自身が制御不能になるのではないかという感覚,の5項目中2項目以上を満たすことと定義した。混合性の特定項目としては,エピソード中に躁病及び軽躁エピソードは満たさず,(1)高揚した開放的な気分,(2)自尊心の肥大または誇大,(3)普段よりも多弁であるかまたは話し続けようとする心迫,(4)観念奔逸またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験,(5)エネルギーまたは目標指向性の活動の増大,(6)悪い結果になる可能性が高い活動への従事や熱中,(7)睡眠欲求の減少,のうち3項目以上を満たすことと定義した。

結果

NESARC-Ⅲの参加者36,309名のうち,MDDの有病率は,12ヶ月で10.4%(3,963名;女性13.4%,男性7.2%),生涯で20.6%(7,432名;女性26.1%,男性14.7%)であった。生涯MDDの発症年齢は平均29.05歳で,平均3.86回のエピソードが報告された()。生涯MDDでは69.4%(薬物治療53.1%,専門家との会話治療62.5%,専門家以外からの支援14.9%,救急受診10.2%,入院11.8%),12ヶ月MDDでは51.9%(それぞれ36.9%,44.0%,5.8%,3.8%,2.6%)が治療を行っていると報告された。抑うつ気分やアンヘドニアが最も重い時において,生涯MDDでは34.8%が自身の死について考え,46.7%が死にたいと思い,39.3%が自殺を計画し,13.6%に自殺企図があった。12ヶ月MDDではそれぞれ28.8%,32.1%,22.8%,4.8%であった。抑うつ気分やアンヘドニアが最も重い時における重症度は,生涯MDDでは軽症10.8%,中等症39.7%,重症49.5%,12ヶ月MDDでは14.4%,38.8%,46.8%であった。不安/苦痛の特定項目は生涯MDDの74.6%,12ヶ月MDDの70.0%で認められ,混合性の特定項目はそれぞれ15.5%,20.6%で認められた。2ヶ月以内に近親者の死を経験していた頻度は,生涯MDDでは12.9%,12ヶ月MDDでは15.5%であった。

結論

2012~2013年における米国成人のDSM-5による12ヶ月MDD罹患率は10%以上であり,20%以上が生涯MDDを経験していた。エピソードの平均持続期間は6ヶ月以上で,ほとんどが中等症または重症であった。MDDの約75%は最も症状が重い時に不安/苦痛の特定項目を伴っていたが,どのエピソード中においても混合性の特定項目を伴う者は15.5%程度であった。

表. 大うつ病性障害(MDD)の特徴,臨床的関連性,特定項目,治療

(石﨑 潤子)

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