精神病におけるビタミンD欠乏と認知機能障害との関連

J CLIN PSYCHIATRY, 78, e750-e757, 2017 Vitamin D Deficiency Associated With Cognitive Functioning in Psychotic Disorders. NERHUS, M., BERG, A. O., SIMONSEN, C., et al.

背景

精神疾患において認知機能障害は,日常生活の質にも関わる重要な症状の一つである。これまでの研究から認知機能障害とビタミンD欠乏が関連していることが示唆されている。たとえば,高齢者において血液中のビタミンD低値と認知機能障害との関連が認められている。疾患研究においては,アルツハイマー病やパーキンソン病,多発性硬化症でビタミンDと認知機能障害との関連が示されている。一方で,若年者における認知機能障害とビタミンD欠乏との関連についての研究はほとんどなく,初回エピソード精神病患者40例を対象に行われた小規模研究において,血中ビタミンD値の低下と認知機能障害との関連が報告されているに過ぎない。そのため,本研究では若年者を含む精神病において,認知機能障害とビタミンD欠乏との間に関連があるのかどうかについて検討した。

方法

2003~2014年に五つの病院で募集した,DSM-Ⅳの精神病の診断を満たす患者225名と,無作為に抽出された健常者159名を対象に横断研究を行った。患者群の内訳は91名が統合失調症,14名が統合失調症型障害,17名が統合失調感情障害,2名が精神病症状を伴ううつ病,38名が双極Ⅰ型障害,16名が双極Ⅱ型障害,3名が特定不能の双極性障害,44名がその他の精神病であった。症状については陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価した。血清中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25nmol/L未満をビタミンD欠乏とし,主な認知機能(処理速度,言語学習,言語記憶,遂行機能)との関連について重回帰分析を行って検討した。

結果

患者・健常者を含めた解析を行ったところ,ビタミンD欠乏は符号変換試験(Digit Symbol Coding)を用いた処理速度の低下(R2=0.40,F6,374=43.8,
p<0.001),及び言語流暢性の低下(R2=0.35,F6,373=34.2,p<0.001)と有意に関連していた。これらの解析は患者/健常者の別,年齢,人種,知能指数(IQ),薬物・アルコール乱用を調整した上で行っている。なお,陰性症状を調整した上で解析を行ったところ,ビタミンD欠乏と処理速度及び言語流暢性との関連は弱まった。

結論

本研究は,精神病患者において処理速度及び言語流暢性とビタミンD欠乏との関連を示した。この結果は,高齢者におけるビタミンD欠乏と認知機能との関連を検討した先行研究の結果とも一致している。また,本研究は若年者においてこの関係を示した初の研究である。本研究は横断研究であるため,因果関係については不明であるが,精神病患者においてはビタミンDを補うことが認知機能改善に効果がある可能性を示した。

(森口 翔)

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