母体のウイルス血症の持続と胎児の脳異常を伴うジカウイルス感染

N ENGL J MED, 374, 2142-2151, 2016 Zika Virus Infection with Prolonged Maternal Viremia and Fetal Brain Abnormalities. DRIGGERS, R. W., HO, C.-Y., KORHONEN, E. M., et al.

背景

ジカウイルス(ZIKV)はフラビウイルス科に属し,ヤブカによって媒介される。現在のZIKV感染の流行により,先天性小頭症の見かけ上のリスクが上昇上昇している。著者らは,妊娠11週でZIKVに感染した女性と胎児の症例を報告する。

症例

妊娠11週の米国在住の女性(33歳)が,2015年11月下旬に夫と共にメキシコ,グアテマラ,ベリーズを旅行中,特にグアテマラで蚊に刺された。帰国した翌日,眼痛・筋肉痛・微熱を発症し,2日目には発疹が出現した。発症4週後とその後の血清学的検査でZIKVに対するIgG及びIgM抗体が両方陽性となり,急性あるいは最近のZIKV感染と矛盾しない結果であった。

妊娠13,16,17週目(症状消失後1,4,5週目)に胎児超音波検査が行われたが,小頭症や頭蓋内石灰化は認められなかった。しかし,妊娠16週の血清から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)でフラビウイルスが検出され,患者は胎児のより詳細な検査を希望した。妊娠19週目には,頭蓋内の解剖学的異常を示し,石灰化は認められないものの大脳外套の菲薄化が見られ,第三脳室の拡大と上方伸展,側脳室前角の拡大,側脳室内側壁の陥凹,透明中隔腔の欠如は脳梁欠損を示唆した。妊娠16週目に47パーセンタイルであった頭囲は,妊娠20週目には24パーセンタイルまで減少した。

妊娠20週目の胎児の核磁気共鳴画像(MRI)は,前頭葉・頭頂葉の大脳外套に重度のびまん性萎縮を示し,大脳外套の正常な層構造はなく,サブプレート領域は大部分が検出されなかった。透明中隔腔は非常に小さく,脳梁は14mmで妊娠週数から予想される範囲18~22mmより有意に短かった。深刻な予後を考え,患者は妊娠21週で中絶を選択した。

死後検査

胎児の脳の死後検査では,大脳皮質は広範に菲薄化し,高いZIKV RNA量及びウイルス粒子が検出され,ZIKVが分離された。

考察

一般にZIKVウイルス血症は発症後1週間未満で終わると理解されており,発症後1週間以内であれば血清あるいは血液中のRNA検出(RT-PCR)が診断の選択肢となるが,診断は通常,IgM及び中和抗体に基づいている。しかし,著者らは発症後4週目と10週目の妊娠女性の血清にZIKV RNAを検出した。これは胎児や胎盤においてウイルス量が高かったことから,本症例でZIKVウイルス血症が持続したのは胎児や胎盤でウイルスが複製された結果ではないかと疑っている。この症例が示すように,胎児の脳のZIKV感染から超音波検査での小頭症及び頭蓋内石灰化の検出までの潜伏期間は長期化する可能性がある。この期間中の超音波検査による陰性所見は誤った安心をもたらし,意思決定を遅らせる場合がある。頭囲の定期的な超音波測定や,脳MRIの軟部組織の優れた解像度が脳異常検出に有用となり得る。

結論

本研究は,発症後1週以降の妊娠女性から得た血清のZIKV RNA検査,及び定期的な胎児の超音波検査や脳MRIによる頭蓋内のより詳細な解剖学的評価の重要性を強調するものである。

(長井 信弘)

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