【POINT.2】“担当制”と先進音響機器による安心感のある環境で丁寧に傾聴

栗原 正亮 氏有限会社みわ薬局/代表取締役

話の中心は生活面、プライベートのため“かかりつけ”導入前から“指名”も

例えば抑うつ、不眠といっても、そこにはご両親の死、離婚、DV被害、あるいはお子さんの問題など、いろいろな要因があって症状につながっています。どうしても話の中心が生活面、プライベートなことになり、時間がかかる患者さんも少なくありません。そこで投薬カウンター4カ所をしっかり区切り、患者さんの声が他の患者さんには聞こえない音響システムも導入しています。

また、話の性質上、患者さんが薬剤師を指名することが多く、以前から“担当制”を導入しています。また、一人の患者さんの対応が終了すると、その薬歴を書き終わらなければ、次の患者さんには対応しないのが、この薬局での決まりです。

訪問看護師の依頼を受け、服薬最適化の “分割”により患者宅へ訪問指導

少し、具体的な介入事例を紹介します。例えば4週間処方の患者さんが、実際には3週間、2週間で来局するというケースがあります。一年間では、必要以上に沢山の薬が出ていることになります。しかし、意外と処方医がそのことを把握していない場合があります。そこでオーバードーズ(OD)の可能性が高いとして、主治医にフィードバックしています。逆に薬が飲めていない場合は、主治医に相談しながら、注射に移行するケースもあります。

また、患者さんが睡眠薬をODされる事例もあります。通常連絡を受けると、「救急車を呼んでください」という流れですが、ある事例では、親御さんから娘さんがODされたと連絡をいただきました。ただ、意識はしっかりあり、問題もなさそうでしたので、私が経口補水液を患者さん宅へ持参しました。そこで大切なことは、どうしてそういうことになってしまったかを患者さんと話すことです。その時には、「ODするほど、しんどかったのですね」と、患者さんに寄り添い、患者さんの感情を共有し、患者さんの認識をしっかりと理解することを重視します。

他に、覚せい剤依存は脱却したものの薬物依存で、草津病院以外にも複数のクリニックから沢山の薬をもらい、適当に飲んでいるという事例があります。訪問看護師さんから、「手に余る」とご連絡をいただきました。そこですべての薬を私が回収し、それを一包化して毎週、自宅まで届け、お薬カレンダーにセットしています。既に1年半ほど経過しましたが、各医療機関等と連携することで、薬の量は当初の約半分になっています。実は、薬局開設当初から、そういう“お届け”は複数人いて、現在は、一週間ごとが2人、二週間ごとが1人、そして4週間ごとが1人います。

訪問看護師や病院薬剤部とは患者中心の連携体制を構築

在宅患者さんへの対応については、主に草津病院の訪問看護師さんの依頼を受けて患者宅を訪問しています。また、病院薬剤部との連携については、必要に応じてトレーシングレポートを送り、病院側からは退院時情報提供書をいただき情報共有しています。特に、初めての入院だった患者さんが来局する場合、退院時情報提供書があれば事前情報を踏まえて、「しんどかったですね」「こんなに入院していたのですね」「入院中はこの薬でしたが、退院後はこういう薬が出ていますので・・」と話ができますので、患者さんとの距離感、信頼を得るまでの時間も短縮されます。