【POINT.1】とにかく話を聴き、服薬状況を把握し、しっかり薬歴を取ることが大切

栗原 正亮 氏有限会社みわ薬局/代表取締役

統合失調症は横ばい、神経症性障害、気分障害、認知症は増加傾向に

最近の精神疾患の動向は、草津病院に認知症疾患センターがあることも関係しますが、認知症が増加傾向にあります。統合失調症は横ばい、神経症性障害と気分障害は増加傾向にあり、全体としてはそれぞれ25%の割合です。

患者対応については、精神疾患の症状によって少しずつ違います。まず、統合失調症ですが、従来は入院治療が主体でした。入院中にしっかり薬物療法を行い、患者さんに病識を持ってもらい、薬を飲む必要性を理解し、自信がついたところで退院するというのが一般的でした。

しかし、現在は1ヵ月、3ヵ月というスパンで退院となり、しっかりした準備がされずに通院に移行することもあります。より一層、地域で支えることが重要になってきます。特に精神科の場合は、検査や外見からでは分かりませんので、退院後の薬局でのフォローアップがとても大切です。

「病識」「薬の必要性の認識」の有無や程度に応じた患者対応が大切

統合失調症、特に初発の場合、患者さんは自分の不思議な体験や現象などの要因は、例えば隣人や家族、特定の団体や政府機関などからの迫害、つまり外的要因だと思います。自分が病気だとは思いません。病識に欠けているので、「なんで薬を飲まなければならないのか?」となるのです。従って、なぜ薬が必要なのか、薬を飲むことでどう改善していくのかということを丁寧に説明していくことが重要です。

しっかり病識がある患者さんの場合には、薬の必要性も分かっています。ただ、基本的に変化に弱い面があります。真面目で几帳面な性格で、診察の予約をした日には、どんなことがあっても受診され、きちんと薬も飲まれます。逆に、一度でも飲み忘れると混乱し、「あぁ、どうしよう!どうしよう!」と、電話を掛けてくるケースがほとんどです。

そういう両方のタイプの患者さんが来局されますので、「あ、この人はまだだな・・」「この人は病識もあり、服薬の必要性も認識されているな・・」と、嗅ぎ分けて、それぞれ適切に対応することが求められます。

患者さんに「自身のことをわかっている」と認識されることが大切

精神疾患に限らず、病気、薬物療法のことを丁寧に説明していくことは大切です。ただ、その前に、とにかく患者さんの話を聞き、服薬状況をしっかりと把握し、薬局内できちんと共有できるよう、しっかりと薬歴に記録することが重要です。その患者さんが一回話したことは、薬歴を開いたら皆が一目で分かるような形にしています。

薬の説明をするときは、「これは統合失調症の薬です」というような説明の仕方はしません。「しっかり飲んでくださいね」と言っても、病識ができていなければ、「なんでそんなことを強要するんだ」ということになってしまいます。まずは、患者さんの現状と過去に起こった困ったこと、しんどかったことをしっかりと聴き、対面する薬剤師が十分に理解している。そのことを患者さん自身に認識してもらうことが重要です。

その信頼感のなかで、例えば患者さんが発した「この薬、ちょっと○○なんだよね」という言葉から、その薬を患者さんがどう思っているかを推察します。そして「そういう症状だと、このお薬は効果がありますよ」「それなら、この薬でこういう効果が期待できますよ」ということを、しっかり説明することが重要になります。