【POINT.2】安芸高田市から広島市へ 保健事業で必要とされるようになった薬剤師の力

松田 直子 氏株式会社ホロン すずらん薬局川内店(広島)

安芸高田市との連携を経て、広島市との「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施事業」がスタート

すずらん薬局グループでは薬局業務の見える化を目指し地域の健康と福祉の情報ステーションとして様々な活動をしてきました。今で言うところの健康サポート薬局です。健康寿命延伸に薬局薬剤師や栄養士が貢献できることを示すため、長年様々なことにチャレンジしてきました。

その中で地域包括支援センターや安芸高田市の糖尿病予防事業でエビデンスを出し、当社の本拠地である広島市に拡げたいという目標を持ってやってきました。そのために自分たちにない技術やノウハウを求めて産官学などとの連携を深めてきました。

これらの様々な人とのつながりが、2018年からの広島市のポリファーマシー対策事業として、広島市・薬剤師会・医師会・協会けんぽとの連携協力協定につながり、さらに2020年からは広島市と広島市域薬剤師会による「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施事業」が始まりました。これは、高齢者の健康寿命の延伸を図るために、全国の市町村が24年度までに取り組むことが国によって求められている政策のひとつです。

これが開始されるまでには安芸高田市での実績など、弊社の長年の取組を広域連合や市の関係部署にこの事業に薬局薬剤師・栄養士が貢献できることをアピールし続けました。その後、市の体制整備とともに機が熟し、市の関係部署の方が弊社に見学に来られ、「地域包括ケアにおける薬局の役割について」のプレゼンテーションや在宅訪問同行をされた後に予算化されました。

地域によって健康課題に違いがあると思いますが、広島市の課題は糖尿病です。外来疾患別医療費が最も高い疾患は男女とも糖尿病であり、透析患者で糖尿病を起因とするのが約6割となっています。

本事業を開始するにあたり、広島市の地域包括支援センターの職員さんに糖尿病の病態や治療について教えて欲しいという依頼が区役所からありました。そこで、私が講師となり研修会を開催したのですが、忙しい中、40人以上の職員の方が参加してくださいました。講義のほか、インスリンキットや補助器具なども手に取っていただき、インスリンの注射針を試しに刺してもらったところ、針の痛みがないことに驚かれていました。皆さん、糖尿病の合併症や器具などについて様々な知識を高めたいという姿勢を持たれているのを感じました。

本事業での薬剤師の役割は、糖尿病重症化予防のために、糖尿病性腎症重症化予防対象となった患者さんに服薬管理や相談指導を行ったり、ポリファーマシー対策事業の対象者の中で、とくに糖尿病患者さんで希望される方の自宅を訪問して服薬管理を行ったりしています。また、地域包括支援センターが支援している高齢者の集まり「通いの場」に行き、服薬についての講演や相談なども行っています。現在は、コロナ禍で思うように事業が展開できていないのが残念ですが、今後の目標として、単発ではなく、継続的な支援で参加者ご自身が健康改善を実感できる事業にし、結果としてエビデンスを出していくことができればと思っています。

これからの社会は、働く人が減少していく中で増加する高齢者を支えていかなければなりません。様々な職種との医療連携は不可欠であり、その中で薬剤師の力量を発揮できるようになるのが重要だと思います。

当薬局には、日本糖尿病療養指導士や広島県糖尿病療養指導士の資格を取得している薬剤師・管理栄養士が複数在籍し、糖尿病予防教室に関わってきました。教室では、行政をはじめ地域のいろいろな職種の方、地域資源を活用した多職種協働・連携といった調剤業務では得られない経験ができるので、ぜひ多くの薬剤師にも体験してもらいたいです。

今、行政側でも薬局・薬剤師を活用しようという雰囲気になってきているように感じます。私達が地域社会で行ってきたことが、少しずつ実績を重ね成果が表れてきたのではないかと思います。今後は、若い薬剤師さんにも糖尿病予防に関わる機会を提供して育成に尽力していきたいですし、さらに地域に密着した関係を築けるよう、予防教室なども積極的に行っていきたいと思っています。

  • この事業が必要になった背景として、日本の医療制度では75歳に到達すると保健事業の実施主体は市町村等から後期高齢者医療広域連合に移行します。そのため、74歳までと75歳からの保健事業が適切に接続されていませんでした。一方で、65歳から対象となる介護保険は、市町村等が主体となっています。高齢者は多くの場合で、保健事業(疾病予防)と介護保険(生活機能維持)の両方を必要とします。両方で充実した支援を受けることで高齢者の健康寿命は延伸するとされ、そのためには市町村が高齢者の医療・健診・介護などの情報を一括して把握して保健事業と介護予防を一体化して行う必要があると考えられるようになったわけです。