【POINT.1】和気あいあいの糖尿病予防教室で育む参加者のモチベーション

松田 直子 氏株式会社ホロン すずらん薬局川内店(広島)

できそうなことから目標を立てる

私が入社して3年目、すずらん薬局が安芸高田市の保健事業の「糖尿病予防教室」を受託しました。これは以前から当薬局が独自で行ってきた健康教室や糖尿病教室、お祭りなどのイベントで開催してきた健康フェアなどが、地域住民の健康促進に貢献していると評価してもらえたのだと思います。

安芸高田市糖尿病予防教室は、2015年10月に第1期が始まりました。参加者は、特定健診の結果、非肥満で糖尿病の発症リスクがある84名の中で希望者の17名、指導側メンバーは、安芸高田市職員の保健師さん、管理栄養士さん、外部のスポーツトレーナーさん、当薬局の管理栄養士と薬剤師(松田)です。教室全体としての目標は、3年後の健診で糖尿病の発症者を出さないことです。糖尿病予防教室は2015年の第1期から19年の第5期まで毎年開催しました。

2019年度の事業についてお話しします。教室の開催は約半年、2週間おきで全9回です。初回に指導側スタッフも含め参加者全員が糖尿病にならないことを決意表明として書き、それを各々の自宅の目の付くところに貼ってもらうようにしました。私の場合は「私、松田直子は娘とずっと楽しく暮らすために糖尿病にはなりません」にしました。

また、糖尿病の病態説明などオリエンテーション、体組成測定、糖尿病食の試食を行いました。糖尿病食の試食というのは、おかずは同じ量で、ごはんの量を変えて各個人の必要な量の一食分の食事を摂っていただくもので、当初は教室の最後に行っていましたが、2017年度(第3期)からは、今後の食事の目安にしていただくために初回に実施するようになりました。

2回目~8回目の教室では、スポーツトレーナーさんから運動の個別・集団指導、当薬局の管理栄養士と薬剤師による食事や生活習慣の個別指導を行いました。食事指導では、試食の他、今まで当薬局の糖尿病教室で使用してきたツールを改良して用い、個々の生活習慣や体組成測定結果に応じた目標をいくつか提案し、その中から参加者ご自身に出来そう、または、頑張ってみたいという目標を選んでいただきました。

例えば「1口20回以上良く噛んで食べる」「休肝日を作る」などです。参加者には農業従事者が多く、おやつが毎日10時と15時の2回という習慣の方も少なくありません。そのような方へは、「おやつを減らす」などの提案もしました。簡単に実行できそうに思えても、私自身の生活で振り返ってみるとできていないことが多く、さらに継続して行うのは決して楽なことではありません。

これらの目標は、次回の指導時に評価し同じ目標で継続したり新たな目標を設定したりして、より実践しやすい内容にしていきました。指導する際にスタッフ間で約束したのは、「できなくても本人を否定せず、肯定しモチベーションを保ち、さらに上げていくようにしよう」ということです。参加者の皆さんと接しながら実感したのは、「自分のことを気にかけてくれるということが励みになって、できることをちょっと頑張ってみよう」と思ってもらえることが大切だということです。

また、糖尿病と診断されていない人に血糖値を身近に感じてもらうためにHbA1cが同じ2人の方で、1人にはもみじ饅頭を食べてもらい、食べる前から、食べた後15分、30分、60分、120分後の血糖を測定してもらい、食べない人との血糖値の変動の違いを実感していただいたりしました。

糖尿病予防教室では、参加者の皆さんにできるだけわかりやすく、興味を持っていただく内容にすることが重要です。以前、研修会を受講した時、ある保健師さんが、高血糖をとてもわかりやすく話してくださったのが印象的でした。「高血糖というのは、血管内に糖がついたベタベタボールが多くなっている状態です。その上、血圧が高いとベタベタボールがプロテニスプレーヤーばりの強烈なスマッシュとなって壁である血管を攻撃してしまいます。」私達はこの話を参考にし、教室では実際に表面がつるつるしたビニールボールとトゲトゲの凹凸のあるボールを用意し、参加者全員に一斉にボールを壁に投げてもらいました。皆さん、高血糖状態の血管ではこんな衝撃が起きているということに驚きながら、楽しんで糖尿病について学んでくださっているようでした。

2回目と7回目に検体測定室を臨時開設し、HbA1c測定を行いました。9回目の最終回では、今までの振り返りと、体組成を測定し、HbA1cの結果と合わせ、教室の前後でどのように改善したかを評価しました。

モチベーションを保つためにはフォローアップも重要

2015年度の第1期の結果をお伝えしますと、教室の前後で体重・体脂肪・腹部肥満率が減少傾向、たんぱく質(筋肉)率が増加していました。教室の開催が食欲の増進する秋から冬であったこと、参加対象が非肥満者だったことから、変化はあまり期待できないと思っていたのですが、予想以上の結果となりました。さらに、2年後の検査データでも教室参加者の中に糖尿病を発症された方はおらず、一方、参加されなかった方の中では、2人が糖尿病を発症していました。これは、参加者が教室中に行動変容の実行期まで行えており、教室終了後もモチベーションを保っておられるということだと思います。

糖尿病予防教室で一番難しいことは、継続した予防の実践です。教室の卒業生は、次回以降の教室にも継続して来ていただけるような仕組みにしています。でも、やはり皆さんお仕事や家のことなどが忙しくて継続して通うのが難しく、通えなくなるとモチベーションを持続させるのも難しくなってしまうようです。

そこで、「お助けフォン」という市内で使用するテレビ電話システム(安芸高田市が設置)や、2016年度から市内6町での巡回型の健康教室(2019年度は1か所で年2回)でフォローアップを行っています。せっかく時間を割いて参加していただいた教室を意義あるものにするためにも、皆さんが糖尿病予防の実践を継続していけるように、今後もフォローアップは必要です。

  • 糖尿病とは診断されておらず糖尿病発症リスクがあるとされた対象者

    【2015年度~2017年度】
    特定健診データにより下記の(1)かつ(2)もしくは(3)にあてはまる人

    1. 非肥満
    2. HbA1c 6.0~6.4の人
    3. HbA1c 5.6~5.9で血圧・脂質・飲酒習慣のいずれかのリスクがある人

    【2018年度~2019年度】

    1. 非肥満(BMI25.0未満)
    2. HbA1c 6.0~6.4の人