【POINT.2】患者のためにICTツールを活用し「医療と介護をつなぐ」を実践

八鍬 紘治 氏日本調剤株式会社 東北支店 在宅医療部

円滑な多職種コミュニケーション体制づくりにMCSを利用

私たちが在宅患者さんに介入する時には、主治医、担当ケアマネージャー、訪問看護師、薬剤師など多職種 による“グループ”を作ります。5年ほど前から、グループ内の連絡や情報共有のためにMCS(メディカルケアステーション)という、ICTツールを利用しています。今では栄養士や介護施設職員、行政職員などもグループに加わることが多くなり、更に情報共有がしやすくなりました。

私が在宅訪問を始めた当初から連携している医師との間では「文書や電話によるやりとりだけでは負担になったり、タイムラグが起きる」との共通認識があり、8年ほど前から連携ツールを探していましたが、最終的にMCSに辿り着きました。当初はケアマネージャーやその事業所におけるMCS利用には消極的で、連絡等は電話で行い、訪問報告書はFAXまたは郵送で送るといった従来のやり方でした。徐々に関係職種がMCSでつながる体制が構築されてきました。

日常的に訪問した職種の方がMCSに情報をアップしますので、多ければ毎日のようにコメントが入ることもあります。

例えば、処方変更により薬が変わったときには私から「今回、インスリンの量が増えたのでこういう症状があったら教えてほしい」とか、逆に訪問看護師やケアマネージャーから「こういう症状は低血糖ですか?」といった質問も入ります。また、今後の治療方針などを主治医に気軽に質問できるところも利点だと思います。

多職種で夏場の水分補給を見守り脱水や腎症悪化を回避

実際の活用事例を少し紹介します。

糖尿病の場合、重症化予防はとても大事です。血糖コントロールだけでなく血圧管理や塩分摂取量、腎機能の状態に注意する必要があります。主治医からは検査値や診察結果における情報が入りますので、各職種が上げた情報と合わせて現場で薬の効果確認をしています。

また、夏場は特に水分摂取量が脱水や腎機能に大きく影響します。例えば、私がある患者さんの血圧を測定したとき、皮膚に触れるとすごく乾燥していました。おそらく脱水状態であろうと思い、ご本人から状況を聞くと、水分摂取量が非常に少なかったのです。その場で情報共有し、その後、訪問する方には「水分のこまめな補給に気を付け、摂取量を確認してほしい」とお願いしました。その後は、「○○ml飲んでいました」など関係職種みんなで情報共有し、脱水や腎機能低下を起こすことなく無事に夏場を乗り切ることができました。

私たちが在宅医療に関わる前は、特に介護職の方から「医師や薬剤師になかなか相談ができない」と言われ、医療と介護との壁を感じていました。しかし、MCSによる情報共有が浸透してからは、気軽にコミュニケーションが取れるようになり、例えばケアマネージャーから「患者さんとご家族からこんな質問がきたのですが、どう答えましょう?」という問い合わせもMCSを通じて共有できるようになりました。

薬剤師が専門性を発揮する場は「処方提案」

これまでは医療と介護が交わる場が少なかったと思いますが、薬剤師は医療と介護の両方に関わっています。私は、薬剤師は医療と介護をつなぐ職種だと考えています。介護職が医師には言えないことを伝えたり、また医師は直接ケアマネージャーに情報共有する機会が少なく、その間に入ることで患者さんにとってより良い支援につなげたいと思っています。

 糖尿病に関して、今後更に専門性を高めたいと考えており、薬剤師の専門性を発揮する場は、処方提案だと考えています。例えば在宅訪問をしている患者さんでは、減薬した際は次の診察前に薬剤師が訪問して状態を確認し、フォローできます。実際に減薬を検討していた医師から「後押しをしてくれる職種がいるだけで心強い」と何度か言っていただきました。減薬だけでなく「その患者さんに合った薬」の提案をし、医師から薬や治療方針について相談していただけるような薬剤師になっていきたいと考えています。

また、地域活動として由利本荘市では「町おこし」に関わり、地域の人たちに未病・予防をテーマにお話ししたり、イベントを開催する機会があります。例えば、多くの方は塩分の過剰摂取が血圧に影響することは認識していますが、実際には腎機能にも影響します。脱水は命だけでなく、腎機能にも影響するため適切な水分補給をすることが大切で、そういう正しい知識を公的な活動を通して広く知っていただきたいと思っています。