【POINT.1】低血糖が懸念される高齢者をハイリスクと捉え電話介入

添田 英男 氏株式会社なの花北海道 なの花薬局室蘭宮の森店(北海道)/ 薬局長・管理薬剤師

電話では体調を尋ね自己血糖測定値など質問

昨年、改正された薬機法によって、今年9月から服薬期間中のフォローアップの義務化が施行されました。弊社は、全国展開しているメディカルシステムネットワークのグループ会社であり、患者さんのフォローアップについてはメディカルシステムネットワークがガイドラインを作成しました。弊社としても9月以降、そのガイドラインに基づき取り組んできました。同ガイドラインでは、対象となる患者さんの選定例を挙げているほかフォローアップの手順などをまとめ、全国の店舗で業務の標準化を図っています。

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ガイドライン 服用期間中のフォローアップ

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ガイドライン 対象となる患者様の選定例1

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ガイドライン 対象となる患者様の選定例2

なの花薬局室蘭宮の森店は、北海道中南部の海に面した室蘭市にあります。近隣には内科クリニックと脳神経外科クリニックがあり、1日当たりの応需処方箋枚数は60~80枚です。当薬局では、服薬期間中のフォローアップが義務化される以前から、糖尿病患者さんを対象に電話介入を行ってきました。

近年、高齢者に低血糖の症状が現れる方が増加しています。当薬局では、SU剤やインスリン製剤の変更があった場合をハイリスクと捉え、電話介入を行っています。

当薬局が、電話介入を行っている糖尿病患者さんの主な対象は、年齢を考慮した上で低血糖が懸念される高齢者の方々です。高齢の患者さんが多いので、実際に電話を差し上げる際には、普段の生活が変わりなく過ごしておられるかどうかを、まず、お尋ねするようにしています。具体的には、「体調はいかがですか?」とお聞きした上で、変更になった薬を適切に飲めているかどうか、あるいは適切に皮下注射できているかどうかを確認しています。自己血糖測定をしている方であれば、その測定値もお聞きしています。また、低血糖症状が発現していないかどうかも、必ず質問しています。こうした電話介入を行う場合は、電話を差し上げる時間帯と質問項目を記載した書面を、私の名刺と共にあらかじめお渡ししています。

患者さんの中には「発汗=低血糖」の認識がない方も

深く介入したことによって低血糖の症状を発見でき、SU剤の減量に繋がった症例がありますので、ご紹介します。糖尿病歴が20年程度の85歳の男性です。

2019年当時、HbA1cが8%程度で推移していたのですが、2020年初めには12%を超えたため、3月に血糖コントロールのために入院されました。入院前は、リナグリプチン錠5㎎のみを服用していたのですが、退院時にはエンパグリフロジン10㎎・リナグリプチン5㎎の配合錠、グリメピリド2㎎、メトホルミン塩酸塩500㎎、ピオグリタゾン塩酸塩15㎎の4剤に増えていました。しかも、SU剤であるグリメピリドが2㎎処方されていることが気になりました。もちろん、添付文書上では全く問題はないのでしょうが、85歳という年齢を考慮すると少し多いような印象を、私は持っていました。しかし、12%あったHbA1cも6%台まで下がり、体調の変化も特になかったので、ご本人も4剤を継続して服用されていました。

その後、4月受診時は順調に経過したのですが、6月受診時の随時血糖値が60㎎/dl、HbA1c6.5%だったため、主治医はグリメピリド錠を減量されました。低血糖の対応については入院中に指導があったはずですが、私としてはリスク予防のために改めて対応法をご存じかどうか確認しました。また、さまざまなお話を伺う中から、以前、血糖自己測定(SMBG)を行っていたことが分かり、測定器も試験紙もお持ちとのことでしたので、血糖自己測定を再開するよう提案しました。高齢でもあり低血糖症状が懸念されるハイリスクの患者さんですので、電話介入をするべきではないかと判断し、ご本人に打診したところ了承していただきました。

6月の受診時点では、次の診察まで1カ月半くらいの期間があり、また薬が変わった背景がありましたので、5日後に電話を差し上げました。すると、理由は分からないものの、時々、汗が出るとのお話でした。当日は血糖自己測定で随時血糖値86㎎/dl、低血糖に関連する症状はありませんでしたが、少し低めでした。また、過去数日間の食後血糖は100~150㎎/dlぐらいなので、特に心配するレベルではなく、発汗は低血糖が原因である可能性が高いとご説明しました。おそらく、ご本人は経験がなかったために、「発汗=低血糖」という認識がなかったのだと思います。そこで、冷や汗が出た時には血糖自己測定を行い、必要があればブドウ糖を摂取するよう指導しました。

医師には、重篤ではないものの低血糖を起こしている可能性があることを報告し、併せてSU剤の減量を考慮すべきか確認しました。その結果、医師からは、低血糖が頻回ではない上に重篤ではないことから経過観察の指示を受け、次回の診察時に減量を検討するとの回答をいただきました。その後、7月受診までの間に時々、随時血糖値が60㎎/dl台になることもあったため、グリメピリドが減量されました。その際も電話介入が必要と判断し、7日後に電話を差し上げ、医師に減量後の状況を報告しました。

つい先日、来局されましたので様子を伺ったところ、低血糖症状は起こっていないとのことで、落ち着いた経過が続いています。

一般論として言えば、非専門医が糖尿病患者さんを診られる場合、血糖値とHbA1cの推移に特に注意を払われると思います。場合によっては眼科受診を推奨しないこともあるかもしれませんし、糖尿病薬の副作用についても余り詳しくないこともあり得ます。また、過度な飲酒を控えなければならないことや、夏場の水分補給の重要性なども患者さんに理解していただくことが重要ですから、薬剤師としては患者さんに対する、そうした多くの情報提供が特に求められていると私は考えています。